第3章 おそろい*
今度こそ寝るぞと実弥さんに促され、私は用意されたふかふかの布団に入る。
それを確認すると、実弥さんは部屋の明かりを消した。
「真っ暗ですね」
「怖ぇなら明かりつけて寝るかァ?」
「ねっ寝れますよ!もう子供じゃないです!」
「ははっ、冗談だっての」
「もぉ…、ふふ」
可笑しそうに笑う実弥さんに釣られて、私も一緒に笑ってしまった。
寝る前に、こんな風にお喋りするのが懐かしくて、何だか少し浮かれてしまう。
私、今日眠れるかな?
「おやすみ葉月」
「はい実弥さん。おやすみなさい」
眠りのあいさつを交わし、それぞれ瞳を閉じた。
…。
どうしよう。
ちっとも眠気がやって来ない!
我慢が出来なくなって、閉じていた目をぱちっと開けた。
いつもと違う天井。
いつもと違うお布団。
ふっと隣を見れば、そこには私の大好きな実弥さん。
寝る時はいつも一人の私にとって、今隣に実弥さんがいることが、この上なく嬉しい。
どうしようもなく嬉しくて、ものすごくドキドキしてしまう。
あぁ私、今日はやっぱり眠れないかも。
けれども今は夜だ。
夜は寝なければ。
…実弥さんはもう寝たのかな。
寝返りを打つフリをして、実弥さんの方へごろんと身体の向きを変えてみる。
実弥さんは、仰向けで静かに寝息を立てていた。
実弥さん、寝るの早いんだなぁ。
お仕事して来たから疲れてたのかも、なんて考えながら、寝ている実弥さんをじっと見つめてしまう。
さっきまでは良く見えなかったけど、目が慣れて来たからか、暗くても実弥さんの顔がよく見えた。
僅かながらに部屋に入る月明かりに照らされる実弥さんの横顔。
心なしか白銀の髪がいつもより輝いて見えた。
寝ている姿もなんて素敵なの…
一人きゅんとしていると、
「そんなに見てたら穴があくぞォ」
「っ!!?」
起きてたんですかー‼︎
寝ていると思い込んでいた実弥さんは、私を見るなりニヤリと笑うのだった。