第3章 おそろい*
「よし、寝るかァ」
「あぁ!待って下さい!」
「ァア?」
さぁ寝るぞと明かりを消そうとする実弥さんへ慌てて待ったをかける。
まだ大事なことが済んでいないのだ。
不思議がる実弥さんを他所に、私はいそいそと部屋の隅に置いておいた例のものを持ってきて実弥さんの前へスッと置いた。
「なんだこりゃァ」
「蜜璃ちゃんからの贈り物です。“二人で開けてね“って」
「ヘェ」
「中身何でしょうね。私も知らないんです」
「んじゃ、開けてみっかァ」
実弥さんが結び目を解き風呂敷を広げると、出てきたのは小さめな少し横長の綺麗な木箱。
何が入っているのかな。
まだ見ぬ中身に期待を膨らませ、その箱が開けられるのをワクワクしながら待った。
木箱にかけられた紐をスルッと解き、パッと蓋が開けられると…
「オォ」
「わぁっ」
湯呑みが二つ、仲良く並んでいた。
手に取ってみると、滑らかな触り心地で、大きさも程よくしっくりと手に馴染む。
底の方は小さく、そこから飲み口へ向かって緩やかに広がる形になっていて、湯呑みではあまり見ない形でとってもお洒落だ。
色も下が濃く、上にいくに従って滑らかに淡い色へと変化していく。
なんて綺麗なんだろう。
「いいヤツくれたなァ」
「とってもお洒落ですね。私のは桜色です。可愛いです!」
「俺のは若緑か」
「それすっごく実弥さんぽいですね」
「…そうかァ?」
「はい!」
なんて素敵な贈り物なんだろう。
今度会ったらお礼しなくちゃ。
「これ、揃いになってんのかァ」
「あ、それは…」
自分のと私のを交互に見ながら呟いた実弥さん。
何故蜜璃ちゃんがこれを選んだのか。
それはきっと…
「私が…“実弥さんとお揃いのものが欲しい“って言ったからだと、思い…ます」
私がそう言うと、とてもびっくりしている実弥さん。
あれ、やっぱり嫌だったかな。
どうしよう…
言わない方が良かったかも…。
オロオロとしながら、不安げにチラッと前を見てみると、そこには目を細め、私を愛おしげに見つめる実弥さんの姿が。
「可愛いヤツ」
私だけに向けられた、その柔らかな微笑みに、私の鼓動がトクンと跳ねた。
「明日、これで茶でも飲むかァ」
「はい!」
ふとした時に見せてくれる実弥さんの笑った顔。
これが見れるのは、私だけの特権ならいいなと、そう思った。
