第3章 おそろい*
実弥さんは、それがどうしたとでも言いたげな顔で、頭を拭きながら私の向かいに胡座をかいて座った。
「なんだよ。気に入らねェか?」
「まさか!そうじゃなくて。わざわざ買って頂いて申し訳ないと言うか、なんと言うか。あ、時々泊まりで稽古に来る隊士さん達がいるって言ってましたよね?その時使ってる物でも私は全然良かったので。なんなら実弥さんのお古とかでも」
「ァア?俺のって…」
そこまで言いかけて、実弥さんは黙ってしまった。
顎にちょっと手をかけて…何か考えてる?
「…それはそれでアリかもなァ…」
「ん?」
実弥さんが何かぽそっと言ったのだけれど聞き取れなくて、なんだろうと首を傾げてみると、
「…なんでもねェ、気にすんなァ」
はぐらかすようにふいっと顔を逸らしてしまった。
薄っすら頬を赤らめて。
いやそんな、気になります…。
「だから…あれだァ。俺のじゃデカ過ぎんだろ。それに………他のヤローが袖通したモンなんか着せたくねェんだよ」
目を合わせないまま、またぽそっと呟く実弥さん。
でも今度はちゃんと聞き取れた。
まさかそんな理由が隠されているとは。
他の人とは違う、私だけ特別にしてくれたことがすごく嬉しい。
「ありがとうございます」
素直にお礼を言うと、実弥さんはフッと目を細め、ポンと私の頭に手を乗せた。
優しい笑顔と温かい大きな手。
私の大好き。