第3章 おそろい*
肉じゃがに、茄子の煮浸し
牛肉のしぐれ煮に、ほうれん草の胡麻和え
鰤大根に、金平ごぼう
味噌汁に、炊き立ての飯
俺は飯にこだわりはねェ。
白米に味噌汁、おかずが一品か二品有ればそれでいいと思っている。
それが一変。
いつも質素な飯を食ってるだけの食卓が、今日は彩り豊かなおかずで埋め尽くされていた。
「何が好きか分からなかったので…」
成る程それでか。
だからと言って、こんなに作る必要はねェんだがなァ。
二人分で十分なんだが、これは軽く4、5人分はあるんじゃねェかと思う。
「作んの大変だっただろォ」
「いえ、誰かのために作るのが久しぶりだったので、楽しかったです」
そう言って葉月は笑った。
楽しかったか。
それでも時間はかかっただろうに。
だがアレコレ考えてこれを俺のために作ってくれた。
俺はそれが一番嬉しい。
「ありがとなァ。美味そうだ」
「お口に合えばいいですけど」
「お前が作ったんだ。美味いに決まってる」
「そ、そうなんですか…」
こんなに美味そうな匂いさせてんだ。
不味いわけがねェ。
恥ずかしそうに頬を赤らめる葉月を目の前に、俺は「いただきます」と手を合わせ、作ってもらった美味そうな葉月の手料理を食べ始めた。