第3章 おそろい*
そして今に至るわけだが…
今思えば、お館様の言った“とある子“。
甘露寺だろォ。
俺と葉月のことは伊黒と甘露寺しか今のところ知らねェ。
伊黒はこういうことは黙ってるはずだ。
だったらもう甘露寺しかいねぇじゃねェか。
胡蝶にも喋っちまってるし。
甘露寺の奴、一発ゲンコツでも喰らわせとくかァ。
…。
いや、やめとくか。
甘露寺のたんこぶなんか見たら、アイツ泣いちまう。
その上俺がやったなんて知った日にゃァ、俺は嫌われるかもしれねェ。
ダメだそれは。
それじゃァ俺が生きていけねェ。
葉月のことを考え始めたら、無性に会いたくなった。
早く顔が見てェ。
そういやもっと早く帰るつもりで出ちまったから、飯のこと何も決めてなかった。
腹空かして待ってんだろうな。
これから作るのは少し億劫だ。
外に食いにでも行くかァ。
食いモンの好み、聞いたことねェな。
アイツ何が好きなんだろうなァ。
そんなことを考えながら、急ぎ足で帰路につくのだった。
いつものように屋根付きの門の扉を押し開け、玄関まで続く飛び石の上を歩いて行く。
そしていつものように、引き戸の玄関に手を掛け扉を引き開ける。
一歩足を踏み入れれば、そこはいつもの俺の屋敷。
ただ一つだけ違うのは
「おかえりなさいっ、実弥さん!」
俺を待っていてくれる
愛しい存在がそこにいるということ。