第3章 おそろい*
あぁ、やっと帰れる…。
今日は散々な日だった。
思い返せばお館様にもとんでもねェことを言われた気がする。
占い的なものなんて俺はこれっぽっちも信じちゃいねェが…。
きっと今日の俺は、朝から“そういう日“だったんだろう。
『…そうか、昨夜の鬼は十二鬼月ではなかったんだね。それでも十人、負傷者が出てしまった。皆命に別状はないんだね?』
『はい、暫く蝶屋敷で療養することにはなりますが』
『命があるだけでも良かったよ。実弥、昨夜君が行ってくれなければ十人の隊士の命が失われていたかもしれない。ありがとう、感謝するよ。これからも、鬼殺隊を支える柱として頼りにしているよ』
『御意』
『ところで、今日は実弥にとって特別な日なんだってね』
『……は、い?』
何の話だァ?
何を言っているんだと、失礼ながらお館様に向かって思いっきり首を傾げてしまった。
『今日は実弥にとって一番大切な子と夜を過ごす特別な日なんだと、とある子から聞いているよ』
『・・・』
はァァァァァ⁈
なんっだそりゃァ‼︎
あのお館様からまさかそんなことを言われるとは思ってもおらず、俺はまるで言葉が出てこない。
つぅか“とある子“って誰だァ‼︎
俺の心の叫びなどお構いなしに、お館様は満面の笑みでさらに話を続ける。
『実弥のおめでたい話が聞けて、私はとても嬉しく思うよ』
大変申し訳ないが…
お館様のお言葉が、全く耳に入って来ない。
『今日は緊急の任務も実弥の所へは回さないよう配慮するから、心置き無く楽しく過ごして欲しい』
『…ギ…ギョイ…』
楽しそうなお館様とは正反対に、戸惑う俺はただ一言、そう返事をするので精一杯だった。