第3章 おそろい*
胸に手を当てフーッと一度深呼吸。
さぁ、お家に入ろう。
実弥さんは今日遅くなるって言ってたよね。
でも念のため、玄関の引き戸に手を掛けぐっと動かしてみる。
びくともしなかった。
開いてない。
やっぱりまだ帰ってないんだ。
よし、これの出番だね。
私は懐から今日大事に持ち歩いていたあるものを取り出した。
“実弥さんにもらった合鍵“
それを鍵穴に差し込みくるっとまわすと…
ーカチャッ
わ、開いた!
当たり前だけれど、この鍵がここにぴったり嵌まったことに、細やかな感動を覚える。
そして私は、まるで宝箱を開けるかのように胸躍らせながら、ゆっくりと引き戸を引いた。
「広ーい!」
入った瞬間思わず叫んでしまった。
外から見た感じ、きっとそうだと思っていたけれど、気持ちがいいほど広々としたこの空間。
人が10人入ったってまだまだ余裕がありそうだ。
すごーい…
あ、感動してる場合じゃなかった。
早くご飯作らなきゃ。
「おじゃましまーす」
上がらせてもらい、お台所を探すため、玄関から続く長い廊下を歩いていくと、奥の方に目的の部屋を見つけた。
ここもやっぱり広かった!
調理台とか洗い場も広く作ってあって、うちのちまっとした台所なんかより使いやすくて動きやすそう。
そういえばこれも聞くの忘れちゃったけど、勝手にここ使って怒られないかな。
…。
大丈夫!実弥さん優しいもん!