第3章 おそろい*
わざわざ門の前まで荷物を運んでくれた蜜璃ちゃん。
ありがとうね、本当に。
「今度は私の家に遊びに来てね!」
次に会う約束をして、蜜璃ちゃんは家へと帰っていった。
ぱんけぇき作ってくれるんだって。
…ぱんけぇきって、なんだろう?
でも、蜜璃ちゃんが作ってくれるんだもん。
きっと美味しいものに違いない。
楽しみだなぁ。
そんなことがあっての今。
蜜璃ちゃんのぱんけぇきを考えていたら、少し緊張がほぐれてきた。
この食材たちも、傷む前に早く調理してあげないと可哀そう。
よし、行こう!
決心のついた私は、いかにも『不死川でございます』みたいな立派な屋根付きの門の扉を押し開けた。
そして、蜜璃ちゃんにもらった木箱を小脇に抱え、両手にずっしり風呂敷をぶら下げ、いざ。
「おっと…」
よたよたと、おぼつかない足取りの私。
こんなんだから、いつも実弥さんに『危なっかしい』と言われてしまうのかなぁ?
折角敷いてある飛び石を全く踏むことなく、無事私は玄関まで辿り着くことに成功した。
久しぶりだな、この玄関。
前に来た時は、なかなか開けてもらえなかったんだよね。
鍵かけられてさ、おまけにつっかえ棒まで。
あの時は、本当にどうしようもなくてただ泣くことしか出来なかった。
けれど、あれがあったから今私達一緒にいられるんだもの。
今となってはいい思い出だ。
そうそう、実はあの日。
お休みだと思っていた実弥さん。
ほんとはしっかりお仕事の日だったのだ。
蜜璃ちゃんの勘違いだったみたい。
あの後いい雰囲気になった私達だったけれど、実弥さんのお仕事の時間も迫ってたということで、結局家に上がることなく…。
いつもの様にキチンと家まで送り届けてもらうことに。
というわけで、今日はほんとに初めての実弥さんのお家。
胸の高揚感がなかなか治まらないのだ。