第3章 おそろい*
茜色に染まった西の空。
明日もきっといい天気。
そんなことを思いながら、美しい夕焼けに目を奪われている私が立っているのは…。
そう、実弥さんの家の門の前。
ここまで来たのに、今私はこの門になかなか手を掛けられないでいる。
実弥さんに「泊まるか?」と聞かれて自分で「はい」と返事をしたくせに、今更湧いてくる極度の緊張に、夕日を眺めて現実逃避。
「実弥さんのでっかいお家だわーい」と浮かれていた朝の私は何処かへ行ってしまったらしい。
そして、私の傍らにはまだ調理前の食材たち。
これは私が、泊まらせてもらうなら夕飯くらい作らなきゃと思ってここへ来る前に買い込んだのだ。
けれど、何が食べたいか事前に聞くのを忘れた私。
取り敢えず、自分が人に出しても恥ずかしくない程度に作れるものの中でいくつか作ろうと思い、何品か作れるようにあれもこれもと選んだ結果…。
今にもこぼれ落ちそうなくらいパンパンに詰め込んだ風呂敷を両手でぶら下げることに。
いざ歩いてみると、あっちへふらふらこっちへふらふら。
その重みで真っ直ぐ歩けない。
なんてことだ。
辿り着けるかな、実弥さんのお家。
「まぁ葉月ちゃん!私が持ってあげるわ!」
見かねた蜜璃ちゃんが代わりに持ち、実弥さんのお家まで運んでくれることに。
最後まで持って歩く自信のなかった私には、有難い申し出だった。
「ありがとう蜜璃ちゃん」
「お安い御用よ!」
それにしても、蜜璃ちゃんはなんて軽々と持つのだろう。
私には、足を踏み出すことさえやっとだったというのに。
実弥さんが言ってた通り、蜜璃ちゃんはとっても力持ちさんなんだ。
ん?私が非力なだけかな?
どちらにしても、今日は蜜璃ちゃんがいてくれて良かった。
こんなに可愛らしいのに、とっても頼もしくてかっこいいね、蜜璃ちゃん。