第3章 おそろい*
お腹も満腹。
幸せそうな蜜璃ちゃんと一緒に定食屋さんを出ると、今度は小間物屋さんへと足を運んだ。
生活に必要な細々したものが一通り揃ったこのお店。
欲しいものがあれば、ここへ来ればまず間違いなし。
特別買いたいものはなかったのだけれど、折角来たのだし、ただぼーっとしているだけでは時間が勿体ない。
私は店内を見て回ることにした。
一方蜜璃ちゃんはと言うと…
「ん〜、何にしようかしら〜」
さっきまで紅を見ていたかと思えば、次は鋏や剃刀などの刃物が並ぶ売り場へ。
かと思いきや、今度は煙草が並ぶ棚を物色。
いや吸わないよね、蜜璃ちゃん?
と思ったら、今度は店先に並ぶ櫛を見始めた。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり、店の中を何度も往復する蜜璃ちゃん。
店の商品よりも、そっちの蜜璃ちゃんの方が気になってしまう。
堪らず私は蜜璃ちゃんに声をかけた。
「えと、蜜璃ちゃん。今日は欲しいものがあるんだよね?」
「ええ、そうなの!でも迷っちゃってね」
ん?欲しいものがあるからここに来たんじゃなかったのかな?
「因みに聞くけど、蜜璃ちゃんの欲しいものってなぁに?」
「あのね、私……、葉月ちゃんとお揃いのものが欲しいの!」
……。
そうだったのー⁈
じゃあ刃物とか煙草見てたのはなんでー⁈
「言ってくれたら一緒に探したのに!」
「でも、今日は葉月ちゃんを私に付き合わせちゃってるし、それなら私が選んで葉月ちゃんにあげようかなって思ったの」
それって、さっき私が行きたいところは無いって言っちゃったから?
そんな、気にしなくていいのに…
「ごめんね蜜璃ちゃん。……私も、一緒に探していい?」
「葉月ちゃん…」
「私も欲しいな、蜜璃ちゃんとお揃いのもの」
私がそう言うと、蜜璃ちゃんはぱぁぁっと顔を輝かせた。
「うん!探しましょっ!」