第3章 おそろい*
「あなたはどう?足りてる?」
「はい!あ、この海鮮丼とってもおいしいです!」
私がそう返事をすると、女将さんはにこっと微笑んだ。
「そう、良かったわ。今日はいい魚が手に入ったのよ。はいこれ、おまけのお刺身ね」
「わぁ美味しそう!」
「女将さんいつもありがとうございます!」
「いいのよ〜、ゆっくりしていってね」
女将さんは注文を取るため直様別のお客さんの元へ向かった。
お昼時。店内は満席。
お店の中をくるくると動き回る女将さんはとても忙しそうだった。
「ここ、伊黒さんといつも来てるんですね」
「そうなの。ここのご飯とっても美味しいから葉月さんにも是非食べてもらいたくって」
「ありがとうございます。とっても美味しいです!」
「よかったわ!」
まだ来て然程時間は経っていないけれど、甘露寺さんは既にどんぶりを三杯完食していた。
因みに私はまだ四分の一のところだ。
「ねぇ葉月さん」
「どうしました?甘露寺さん」
「不死川さんから聞いたのだけれど、葉月さん私と同い年だったのね。びっくりしちゃったわ!」
「…そうだったんですか!」
「そうなのよ!だからね、もう敬語はやめにしましょ?」
「え?」
「そうだわ、これからは葉月ちゃんて呼ぶわね!私のことも蜜璃って呼んで!」
「えと、じゃあ…蜜璃ちゃん?」
「うん!」
グイグイと来る甘露寺さん…じゃなくて蜜璃ちゃんに押されて、敬語を取っ払いちゃん付けで呼ぶことに。
でも全然嫌じゃない。
なんだか前よりもっと仲良くなれた気がする。
嬉しいな。
「葉月ちゃん、この後どこか行きたいところはある?」
「それが…2、3日前から考えてたんだけど、特別行きたいところは無くて。ごめんね?折角のお出掛けなのに」
「いいのよ、無理しないでね。それじゃあ今日は私の行きたい所でもいいかしら?」
「うん!どこに行きたいの?」
「欲しいものがあってね、小間物屋さんに行きたいの!」
「うん、わかった!」
そんな話をしながら、お刺身や他のおかずをつまみつつ海鮮丼に舌鼓を打つ。
私が食べ終わる頃、蜜璃ちゃんの前には顔が見えなくなる程のどんぶりの器の山が。
何杯…?
……。
蜜璃ちゃんはきっと胃袋が丈夫なんだ。
羨ましいな。