第3章 おそろい*
そして今日はなんだかいつもと雰囲気が違う気がする。
…あ、そうか!
「甘露寺さん、今日は隊服じゃないんですね!」
いつも着ているあの胸元が大胆に開いている破廉恥な服ではない。
今日の甘露寺さんは、髪の色とお揃いのような桃色の着物を着ていた。
可愛らしい甘露寺さんによく似合ってる。
「そうなのっ。今日はお休みだからね、私のお気に入りの着物を着てきたの!」
そう言って甘露寺さんはパッと花が咲いたように笑った。
普段の甘露寺さんは、実弥さんと同じように刀を握って鬼と闘うお仕事をしている。
でも、今私の目の前にいる甘露寺さんは、私と何も変わらない普通の女の子だ。
「とっても可愛いです、甘露寺さん!」
「ありがとう!葉月さんもとっても素敵よ!その色、葉月さんによく似合ってるわ!」
どっちにしようか迷った結果、今日はこっちの瑠璃色の着物を着てきたのだ。
「えへへ、ありがとうございます」
お母さんも一緒に褒められてるみたいでなんだか嬉しいな。
「さぁ行きましょ〜」と甘露寺さんに促され、一緒にお店の中へと入った。
牛丼かつ丼親子丼、
牛肉のしぐれ煮にカレイの煮付け、
肉じゃがと、その他諸々…
なんということでしょう。
二人で来たとは到底思えないような半端ない量のご飯がどんどん運ばれてくる。
『足りてるかしら?』
そして運びながらここの定食屋さんの女将さんが普通にすごい事を聞いてくる。
足りてないように見えたのかしら⁈
「はいっ、いつもありがとうございますっ」
『ふふっ、いっぱい食べてね。今日はいつもの縞々の人は一緒じゃないのね』
あ、そうだった。
ここは甘露寺さんと伊黒さんの行きつけのお店だ。
だからか、足りてるか?って聞いたのは。
甘露寺さんの食べる量を大体分かってるから。
「はい、今日はお仕事なんです…」
伊黒さんの話題になった途端、甘露寺さんはぽっと頬を赤らめた。
好きな人の話する時ってちょっと照れちゃうもんね。
そんな甘露寺さんに、胸がきゅんとしてしまった。