第3章 おそろい*
「言い忘れてたけどよォ、ソレ、合鍵だからなァ」
……。
なんですと?
「知ってるかァ?合鍵」
「それはさすがに知ってます!もしかして、わざわざ作ってくれたんですか?」
「まァ…これがありゃァ、いつでも来れんだろォ?」
ちょっと照れくさそうに頬を掻く実弥さん。
まさか、こんな物を用意してくれているなんて思いもしなかった。
すごい…嬉し過ぎて飛び上がりそう。
「私こんなのもらったら、用もないのに行っちゃいそうです」
「いいんだよ、そのためにやったんだ。お前の好きな時に来りゃいい」
好きな時に…。
そんな事が許される仲なんだ、私達は。
なんだか無性に嬉しくなって、目の前の実弥さんに思いっきり飛びついた。
「う、おっ…⁈なんだよ」
「なんか、うれしくて」
「そうかよ。なら作った甲斐があったなァ」
そう言って実弥さんはぎゅっと抱きしめてくれる。
「実弥さん大好きっ」
「知ってらァ」
フッと笑った実弥さんがおでこにちゅっと口付けた。
「そろそろ行かねェと」
「もう行っちゃうんですか?」
「もう行っちゃうんデスヨ。お前も今日は出掛けるんだろォ?」
「はい、甘露寺さんと」
「楽しんで来いよォ」
「はい!実弥さん、お仕事頑張って下さい」
「オォ、行ってくる」
行ってきますのあいさつをするように、実弥さんは私に口付けをする。
ちょっと強面な実弥さんのとびきり優しくて甘い口付けに溶かされて…。
いつまでも、ずっとこうしていたいなぁなんて思ってしまう私だった。