第3章 おそろい*
「実弥さん、どうしたんですか?今日は朝からお仕事でしたよね」
そう、実弥さんは朝から一日お仕事。
だから今日は夕方からおじゃましますという話になったのだ。
それなのに、目の前にいるのは、何故?
「あァ、忘れるとこだった」
すると実弥さんは、今着ているお洋服(これはお仕事のところから支給されてる“隊服“って言うんだって。)のぽけっとから何か取り出す。
「ほらよ」
受け取れとでも言うように、私の手を取り手のひらを上に向ける。
そこへぽんと乗せられた“何か“。
なんだろう?
見たいけど、何を乗せたか隠すように実弥さんの手が重ねられてて…。
「実弥さん…これは?」
「何か分かるかァ?」
「え!なぞなぞ⁈」
「当てたら見せてやる」
「なっ⁈……ぅ、う〜ん⁇」
私は盛大に首を捻る。
小さい…よね?手のひらに収まるんだし。
で、何となく…硬い?
よく分からないので、私の手に被せられてる実弥さんの手を試しににぎにぎしてみる。
ええー、分かんない。
でもこうすると、実弥さんの手を揉んでるみたいでなんだか楽しいような嬉しいような。
……え、なにそれ。
それはちょっとヘンタイっぽいぞ?
ヘンタイは嫌だ!
ぶんぶんと首を振る私を見て実弥さんがくくっと可笑しそうに笑う。
「分かんねぇよなァ」
そう言ってよしよしと頭を撫でてくれた。
実弥さんは私が分からなくてぶんぶん頭を振ったんだと思ったんだ。
あぁ違うんです実弥さん。
でもホントのこと言ってヘンタイだと思われたら嫌だ。
……黙っておこう。
「全然分かんないです」
「じゃァ少しだけ教えてやる。これは玄関で使うモンだァ」
へぇ、玄関かぁ。
……。
ん“ん“ー⁇
それでも分からず眉間に皺を寄せる私に、実弥さんがもう一押し。
「玄関開ける時、何使う?ってこれじゃァもう答え言っちまってんなァ」
え、もう答え出てるの?と実弥さんが今言った事をもう一度思い出してみる。
玄関で使うモン、開ける時に………
………………あ‼︎