第3章 おそろい*
お花畑で摘んできた花を玄関に飾る。
冬の間は辺り一面雪景色で少し淋しいけれど、今の時期は季節の花がそこかしこに咲き乱れ、見ているだけで心が躍る。
今日は小さな花びらが可愛らしい綺麗な水色の花を摘んできた。
「これでよし。うん、綺麗だね」
次は玄関の掃除をしよう。
外用の箒で土間から外へ向かって掃いていく。
玄関の前の石畳も綺麗にしなきゃ。
玄関が綺麗だと、いい神様が来てくれるんだよね?
頑張るぞ。
ここが終わったら廊下の拭き掃除をして、お部屋を箒で掃いたら出掛ける準備をしようかな。
今日はどっちを着て行こう?
他所行きの着物は二着ある。
一着は桜色。
お母さんが作ってくれた羽織と同じ色で、私のお気に入りだ。
もう一着は瑠璃色。
お母さんが出掛ける時によく着ていた着物で、上品でとっても綺麗。
迷うなぁ…
そんなことを考えながらせっせと掃き掃除をしていると…
「よォ、精が出るなァ」
「ぅわぁ‼︎」
目の前に突然、私の良く知る人物"実弥さん"が姿を現したのだ。
びっくりした私は、持っていた箒を取り落としてしまった。
「んな驚くことねぇだろがァ」
俺は化け物かと言いながら、私の落とした箒を拾ってくれる。
優しい。
「ごめんなさい、びっくりしちゃって」
「いや、こっちも悪かったなァ。連絡無しに来ちまって」
「そんなことないです!朝から実弥さんに会えて嬉しいです!」
実弥さんは目を丸くした。
あれ?私何か変なこと……言った!
後から気付いて恥ずかしくなる。
顔に熱が集まってどうしようもなくなってしまい、仕方なく俯くと、私の頭にぽんと大きな手が乗せられた。
「そんな嬉しいかァ?」
覗き込んだ実弥さんにコクンと頷くと、実弥さんは満足そうに目を細め、そのまま私を自分の方へと引き寄せた。
「俺も、お前に会えて嬉しい」
そう言って、私をぎゅっと抱きしめる。
朝から実弥さんの腕の中にいられるなんて、幸せ過ぎてどうにかなりそう。