第3章 おそろい*
『瑠璃』と名付けたその小鳥は、急に私の手のひらから縁側へと飛び降りる。
「そろそろ行く?」
そう聞いてみれば、小鳥は縁側からパッと飛び立つと、
瑠璃色の羽を大きく広げ、朝日を浴びながら空高く羽ばたいていった。
「またおいでー!」
手を振って、その小さなお客さんを見送った。
段々と小さくなっていく青い鳥を見送りながらふと思い出す。
お母さん、瑠璃色好きだったなぁ。
そういえば、あの子が来るようになったのは、お母さんが亡くなってから少し経った頃だった。
もしかして、あれは……お母さん?
私のこと心配になって、小さな青い鳥に姿を変えてまで、毎日様子を見に来てくれているのかもしれない。
心配させてるなんて、ちょっと申し訳ないけれど、それでも……
そうだったら、嬉しい。
なんて、こんな夢見がちな話をしたら、実弥さんに笑われちゃうかな。
小さな『瑠璃』との楽しい一時が過ぎると、お日様はすっかり顔を出し、辺り一面を明るく照らしてくれていた。
先ずはお布団を畳んで、朝ごはんにしよう。
それから散歩がてらにお花畑に寄って、玄関に飾るお花を摘んできて……と、今日の予定を一通り思い浮かべる。
お昼から甘露寺さんとお出掛けをする約束をしていて、その後は夕方から実弥さんのお家に行くことになっている。
そのまま今日は泊まらせてもらうのだ。
初めてのお泊まり……
緊張はするけど…それよりも、今の私はどちらかと言うと、ワクワクの方が勝っているかもしれない。
だって、外からしか見たことなかったんだもん。
初めて中に入れるんだよ、あんなに大きなお家に。
楽しみ過ぎる!
「今日もいい一日になりそう!」
盛大な独り言を言った後、布団を畳み、お腹の空いた私は朝ごはんを作るため台所へと足を進めるのだった。