第2章 母
「ありがとうございます、実弥さん」
「おぅ」
「あともう一つ…あの、さっきの…」
「さっきの?」
「はい。なんか……結婚のあいさつみたいでした」
そう言って、うっとりとした表情で頬を薄らと染める。
「…まぁ、それも兼ねてっからなァ」
「………ぇええ⁉︎」
葉月はこれまた素っ頓狂な声を上げた。
「一緒に住むんだろォ?」
「はい」
「俺んトコ来んだよなァ?」
「はい」
「俺んトコに」
「はい…ん?……はっ!」
「そういうこった」
ただ一緒にいたいから一緒に住もうって言ってんじゃねェ。
同じ時間を共に過ごし、ゆくゆくは…そうなりたい。
本当の結婚はきっとまだ先になるだろう。
全て片がついたら…
葉月を迎え入れたい、俺はそう思っている。
「まだ先の話だがよォ、俺はお前といつか…夫婦になりてェと思ってっから、そのつもりでいてくれェ…」
葉月は真っ赤な顔で俺を見上げていた。
俺も言いながら段々小っ恥ずかしくなってきて、葉月からふいっと顔を逸らしてしまう。
「……私なんかで、いいんですか…?」
「なんかじゃねェ。お前がいいんだよ」
お前以外なんか、もう考えられねェ。
すると葉月は赤くなった顔を隠すように俺の胸に顔を埋めた。
「どうしよう、実弥さん…」
「なんだよ」
「すごくどきどきしてます…。嬉しすぎて…、私このまま心臓爆発しちゃう…!」
「そりゃ大変だなァ…」
爆発して死なれちゃ困るんだが…
そう言う俺もさっきっから照れ臭いわくっ付いてるわでいつもより胸が騒ついて落ち着かねェ。
慣れねェ事すると、心の臓が忙しい…