第2章 母
「どうぞ、実弥さん。好きな所座ってください」
「ありがとなァ」
葉月に座布団を渡され、適当な所に座る。
「葉月、悪ィがそこの障子少しだけ開けといてもらえるか?緊急の伝達があるかもしれねえェ」
「伝達…、開けとくのって玄関の方じゃなくていいんですか?」
「アァ、鴉だからなァ。こっちの方が入りやすいだろうよ」
「鴉?鴉がお手紙持って来てくれるんですか?」
「あー、まぁ…そんなトコだァ」
「へぇ!見てみたいです!」
そう言って葉月は無邪気に笑う。
手紙じゃねェ。
喋るんだぜェ、鴉。
実際見たら驚くだろうなァ。
葉月と爽籟の出会いの瞬間を想像し、ちょっと面白そうだとニヤケそうになるのをなんとか堪えた。
葉月が障子を開けると、縁側が現れる。
その先には庭が広がっており、そこにも季節の花が植えられていた。
葉月が丹精込めて育てているのだろう。
綺麗に手入れされた小さな花壇に、色とりどりの花が生き生きと咲いている。
葉月からたくさんの愛情を注がれてきたんだろうな。
そよ風に揺られる花たちから、それが何となく伝わってきた。
葉月はこちらへ戻って来ると、卓袱台ではなく仏壇の方へ座る。
「実弥さん、お母さんに実弥さんの事紹介してもいいですか?」
「アァ、なら先に線香あげさせてもらっていいかァ?」
「はい!ありがとうございます」
線香をあげ、二人で手を合わせる。
「お母さん、あのね…」
今は亡き母に向かって、葉月は俺の事を話し始めた。