第2章 母
葉月の歩調に合わせてゆっくりと並んで歩く。
暫くそうしていたが、なんとなく物足りねェ。
そうだ、これだな。
「葉月」
「はい!」
俺は葉月に向かって手を差し出す。
「ん」
「はい?」
一応俺の手を見るが、何をやってるのかと首を傾げただけだった。
あ"ー、クソ。
全く伝わってねェ。
しょうがねぇなァ。
俺は差し出す気配の全く無い葉月の下がったままの手を取り、ぎゅっと握った。
突然手を取られた葉月は驚いて俺を見上げる。
「実弥さん!手、繋ぎたかったんですか?」
「まぁ、なァ…」
「言ってくれたらよかったのに!」
手ェ繋ぎてェなんて、小っ恥ずかしくて言えるかよ…
「行くぞォ」
「はい!」
繋いだ手を引き再び歩き出す。
葉月がぎゅっと握り返して来たので、チラッと横目で見やると、葉月は嬉しそうににこにこと笑っていた。
釣られて俺まで顔が綻びそうだ。
だが今は我慢しなければならない。
何故ならここは食事処や呉服屋、ありとあらゆる店が建ち並ぶ大きい通りだ。
鬼殺隊の隊士がいねェとも限らねェ。
万が一会っちまったとして、そん時に腑抜けた面なんか見せてみろ。
どんな噂が立つか分からねェからな。
表情筋に力入れとかねェと…
それにしても、小せェ手だなァ。
俺の手にすっぽりと収まるくらい、小さくて愛おしい。
繋いだ手から伝わる温もりに心が癒された。
頬が緩まねェように堪えながら、人通りの多い大通りを葉月の小さな手を引きゆっくりと歩いた。