第2章 母
甘露寺と伊黒の後押しが無ければここまでにはなれなかった。
自分の背中を押してくれたあの二人に何かで返したいのだと、葉月はそう言った。
確かに、そうだ。
甘露寺が『突撃大作戦』だとか言い出さなければ葉月は俺の家には来なかっただろうし、伊黒が『仕事に支障が出そうだ』なんて言わなきゃ甘露寺の話には乗らなかったかもしれねェ。
そう考えりゃァ俺もあの二人には感謝しなきゃならねェと思った。
最初は、今度会ったら蹴りの一発でも喰らわせてやろうかと思ってたんだがなァ…
てな訳で何がいいかと考えたわけだが…
ハッキリ言って何も思い浮かばねェ。
甘露寺なんかずっと飯食ってるイメージしかねェし、伊黒なんてもっと分からねェ。
ヤローと好きなモンの話なんてまずしねェしな。
さて、どーするかねェ。
ここはもう、安易な発想だが…
『お前んトコの店で俺がアイツらに奢る。それでどうだァ』
『甘露寺さん達がそれで良ければ私は構いませんよ。あ、でも実弥さんだけが出すのはダメですからね!私もちゃんと出します!』
『お前よォ…、甘露寺がいつもどんだけ食ってんのか知らねェわけじゃねェよなァ?』
『はい!知ってます!』
おいおいマジかァ?
知ってて払うって言ってんのかよォ…
だがあれはなァ、普通の一般人じゃとてもじゃねェが払えねェ。
半分でもキツいだろう。
鬼殺隊の柱なら無理なく出せる額だが、それでも葉月はどうしても半分出したいと言う。
お礼のつもりだからか、俺一人で出させるのは嫌だと。
頑固だなァ。
だがそう言う所、嫌いじゃねェ。
『分かったよ、半分なァ』
俺がそう言うと、葉月は満面の笑みでうんうんと頷いた。
あー…、何だこれ。
クソ可愛い。