第2章 母
葉月の突撃訪問から数日、今日も俺は葉月の店に来ていた。
いつもと違うのは、俺と同じ席に、伊黒と甘露寺が座っているということ。
そして、机の上は甘露寺の注文した甘味で埋め尽くされている。
「不死川さん、私こんなに頼んじゃったけど、ほんとにいいのかしら?」
「不死川、今日は会計はお前持ちだということだが、大丈夫か?」
「気にすんなァ、今日はもう好きに食ってくれェ。なんだったら追加で注文してくれても構わねェからよォ」
「そうか、お前がそう言うなら…。では甘露寺、不死川もこう言っている事だ。遠慮なく食べるといい」
「ええ、分かったわ伊黒さん!でも私だけ食べるのも申し訳ないから、伊黒さんも一緒に食べてくれると嬉しいわ?」
「甘露寺、すまないが俺は今腹がいっぱいだ。俺の事は気にせず食べて欲しい」
「そうなの…、分かったわ。でも一人で食べるのは寂しいわね」
「君が食べ終わるまではここにいるから、ゆっくりお食べ」
「ありがとう伊黒さん!不死川さん、頂くわね!」
「オォ、食え食え」
甘露寺が普段どんだけ食べるのか知っているにも関わらず、食べろ食べろと促す俺。
あぁ、今日は俺の財布がすっからかんになりそうだなァと内心苦笑いする。
俺が何故こんな太っ腹な事をしているのかというと、それはあの日の葉月の一言だった。
『甘露寺さんと伊黒さんにお礼がしたいです!』
なんだかんだあったが、無事恋仲にまでなった俺達。
そのつもりは無かったんだが、まぁ、葉月におされて俺が我慢出来なくなっちまったんだ。
好いてる女にあんな風に泣かれたら…なァ?
あんなに想われてるとは夢にも思わなかった。
だから今の俺は、大分浮かれている。
柄にもなく。