第1章 幸せのカタチ
水篠の茶屋の向かいの建物の壁に、身体を寄りかからせながら店の中の様子を見ていた。
自分から会わないと言っときながらこうして様子を見に来ているあたり、何やってんだかなァと自分で自分に嫌気がさす。
見ていたら、今日は水篠と甘露寺と伊黒の3人でお茶し始めた。
アイツらいつの間に仲良くなったんだか。
遠くからだが顔も見れたし今日は帰るかと店に背を向けたその時、
「不死川」
チッ、気付いてやがったか。
店の中から俺の気配に気付いたらしい伊黒がわざわざ俺の所までやってきた。
「ンだよ、何か用かァ?」
「お前、いつまでこんな事続けるつもりだ?まさか、あの娘が嫁に行くまで見てるつもりじゃないだろうな?」
「あー…ま、それもありだなァ」
「冗談も休み休み言え。どういうつもりだ。お前、あの娘の事は気に入っていたんだろう?毎回家まで送り届けるくらいに」
「…何で知ってやがる!」
見てやがったのか!
「俺は…俺ら鬼殺隊はいつ命を落とすか分からねェ。もし一緒になっても、そんな事になってみろ。
残された側の気持ち考えりャ辛いだけだ。
だったら俺じゃなくて他のヤツと幸せんなった方がいいだろォ」
だから離れた。
俺じゃアイツを幸せになんかできねェと思った。
だが伊黒はあまり納得してねェようだ。
「それはあの娘に言ったのか?」
「…言ってはいねェ」
「……」
「……」
しばし沈黙の後、伊黒が口を開く。
「あまり偉そうな事は言えないが、お前の考える幸せがあの娘の幸せとは限らないんじゃないか?」
言われてハッとする。
確かにそれはそうかもしれねェ。
「幸せになれ」と勝手に突き放され「はいなります」と言って果たしてなれるかどうか。
だがなァ、やっぱり俺じゃ無理なんだよ。
いつ死ぬか分からねェヤツと一緒になんかいても苦しいだろ。
「そうかもしれねェが…なってもらわねェと俺が離れた意味がねェ」
「お前がそうやって考えて行動した結果、あの娘の人生がいい方向へ向かっているとは全く思えないがな」
「今だけだァ」
「お前に会いたい寂しい悲しいが全面に出てしまって甘露寺が心を痛めている。不死川、お前のせいだ。甘露寺を悲しませるな」
「お前それが言いたかっただけだろォ!」
結局甘露寺か!