第6章 白詰草の花言葉
花里…だったか?
隠から仮住まいの提案はあったはずだ。
それを断った、ということだよなァ。
もしや冨岡が自ら来いと言ったんじゃねェか?
そっちの線の方が濃い…
そうじゃなきゃ、柱の家に一般人を住まわせるなんて話が出るわけがねェ。
つぅか、まずソイツと冨岡はどういう関係なんだろうか。
「確認だけどよォ、その花里?と冨岡は…恋仲なのかァ?」
そういう事なら別に一緒に住んだって構わねェが…
俺は葉月に二人の関係を尋ねる。
しかし返ってきた返事は俺の予想に反し、とんでもねェ事実だった。
「いいえ、違うそうです」
……冨岡ァ!!
「年頃の娘連れ込んで何してやがる!」
「落ち着いて下さい実弥さんっ!」
まぁまぁと葉月は荒ぶる俺の背中をぽんぽんと叩く。
最近はこの方法で大人しくさせられる事もしばしば…
…手懐けられた感が拭えねェ。
どうにも俺は、葉月にはとことん弱いらしい。
なんだかなァ…
「怒らないであげてください。柚葉ちゃんもすごく考えてお返事したみたいなので」
「だが年頃の男女が恋仲でもねェのに一つ屋根の下だぞ?色々言いたくなるだろォ」
「うーん、私はいいかなぁと思いました」
「お前…、いいのか?友達が男と住むんだぞ?」
「実弥さん言い方…。柚葉ちゃんすごく嬉しそうだったんです。多分柚葉ちゃんは、好きなんだと思います。冨岡さんのこと」
「…なるほどなァ」
そういやさっき、冨岡に名前を呼ばれて照れくさそうにしていたような。
冨岡の方も、満更でもなさそうな感じに見えた。
「冨岡さんも、柚葉ちゃんを見る時の目がなんだか優しいので、本当は二人とも、想い合ってるんじゃないでしょうか」
それで、アイツはこんな思い切った行動に出たんだろうか。
大切なものを失いたくなくて
いつでも自分が守れるように
そばに置いておきたい
「そういう事なら、口出ししないでおいてやるかァ」
その辺の気持ちは俺にもよく分かる。
まだ恋仲じゃねェらしいから、あのヤロウが自覚があってそうしたんかは定かじゃねぇがなァ。