第5章 大変だ、飯がない!
「アイツは…だめだァ」
もし送ってもらったとして、何するか分からねェ。
諦めたようにも見えたが、まだ不安要素が多過ぎる。
葉月には、アイツにはしばらく気を付けてもらいたい。
「まァ女の隠の方が良かったかもしれねェが、隠の中では後藤が一番マシだと思っただけだ」
後藤は信頼できる。
これは本当だ。
「うむ、君がそう言うのならばもう聞くまい」
あっさりしてんなァ。
潔いって言うのか。
マジで助かるぜェ、コイツのこういう所は。
「ところで不死川」
「ァア?」
「あれを見てくれ!」
「あれってなん…」
煉獄が指差したのは西の空。
いつの間にか陽が山に隠れ始めていたのだ。
さっきまでまだ夕陽は出ていたはずなのに…
「オイヤベェだろォ!お前は間に合うのかァ⁈」
「よもや!これはまずいな!」
「もっと慌てろォ!!」
俺は東、煉獄は西へ。
それぞれの任務地へ、呼吸を使い爆速で走り抜いた。
着いた頃には辺りは真っ暗。
先に到着していた隊士が既に鬼と戦闘中。
手こずっていたようだが、風の呼吸で俺が一撃で仕留めた。
全く手応えの無ェ雑魚鬼じゃねェかよ!
こんなのに手こずりやがって等々、言いてェ事は山程あるんだが、遅れて来たのはこちらなのであまりガツンとは言えず、
「もっと修行しろォ!」
と一言言うだけに留めておいた。
煉獄の方は間に合っただろうか。
まァアイツの事だ。
なんとかなっただろうと思い直し、事後処理隊に後を任せて足早にその場を立ち去った。
今日は朝から散々な目にあった…
早く帰って葉月の寝顔でも見て癒されてェ。
葉月は…、一緒に暮らす決意は出来たのだろうか。
まだ月の高く昂る夜空を見上げながら、ふとそんな事を考える。
…早く、一緒になりてェなァ…
そんな事を想いながら、葉月の家へと続く夜道を走って行く。
俺の行く道を、月明かりはいつまでも照らしていた。