第5章 大変だ、飯がない!
「蒼汰さん…」
「… 葉月ちゃん」
「少し眩暈を起こしただけです。だから大丈夫ですよ。私の事は気にしないで、向こうのお手伝い行ってください」
「でもっ…」
「蒼汰さん」
少し厳し目に、諭すように、葉月は言い放った。
「大丈夫ですから」
ね?と葉月が優しく笑いかけると、藤宮の瞳は悲しげに揺れていたが、やがてふぅ…と一つため息を吐くと、顔を上げ、諦めたようにフッと笑った。
「分かったよ。…ごめんね葉月ちゃん…、お大事に」
「はい、ありがとうございます」
葉月はぺこりと頭を下げた。
「不死川さんもすみませんでした。明日からまた再開できるようにしますので、またいつでもいらしてください」
「オォ、がんばれよォ」
「はい!じゃぁ俺行きますね。失礼します!」
深く会釈をすると、藤宮は運び終えたものの荷解きを手伝うため向かって行った。
これでちゃんと諦められただろうか…
「…悪い人ではないんですけどね。ちょっと諦めが悪い所があると言うか…」
「アイツの気持ち、知ってたのかァ?」
「いえ、でも何となく分かってました」
「そうか」
もし俺と出逢っていなければ、アイツとの未来もあったのだろうかと、ふとそんな事を思ってしまったが…
「でも私は、実弥さんじゃなきゃ嫌なので…」
俺の考えを見透かしたかのように、葉月は俺の今一番欲しい言葉を与えてくれる。
「ありがとなァ」
素直に礼を言えば、葉月は嬉しそうにまた寄りかかってきた。
「不死川!!」
「ぅおっ⁈なんだァ!」
幸せに浸るのも束の間、群衆に囲まれていた煉獄がそこからなんとか抜け出しこちらへとやって来た。
「お疲れサン」
「皆元気があって良いな!」
「随分揉みくちゃにされてたなァ」
「うむ!明日は蕎麦屋で蕎麦作りを手伝う事になった!」
「何の約束取り付けてんだァ!」
その他に、うどん屋でうどん作りと、八百屋で野菜の配達もお願いされたらしい。
人がいいにも程があるだろォ。
「葉月さん、体調はどうだろうか?」
「さっきより良くなりました。ありがとうございます」
「うむ!それは何より!」