第5章 大変だ、飯がない!
「なんか体調悪そうに見えますけど…」
「アァ…まァなんつーか、…乗り物酔い」
「え、…まさか葉月ちゃんあの荷車乗ってきたんですか⁈」
「んなわけあるかァ!」
…。
ァア“ッ面倒くせェ…!
「いや、そうじゃねェが…。こっちは大丈夫だから気にすんな」
「辛そうじゃないですか。早く家に返してあげないと」
「もうすぐ迎えが来る。お前ははやく店の方手伝ってやれェ」
「今は葉月ちゃんの方が心配です」
しつけェなァこいつ。
葉月が世話んなってる店の息子だから大人しくしてやってんだが、短気な俺はそろそろ我慢が効かなくなりそうだ。
「だから迎え「あなたが行けないなら、俺が家まで送ります」
「…は?」
オイ…、今なんつったコイツ。
「俺が葉月ちゃんを家まで送ります」
「…何言ってやがる」
「迎えを待つより俺が今送って行った方がはやいでしょう」
「なんでお前がそこまでやらなきゃならねェ。俺が葉月と恋仲なのは知ってんだろォ」
「えぇ、知ってます」
そう言って真剣な表情でこちらを見つめてくる藤宮。
…
やっぱりそうかよ。
知っててそう言ってくるってェ事はつまり…
…諦めきれねェ、か。
だがそう言われてもなァ、こっちだって譲る気なんかさらさらねェんだよォ。
「心配してくれんのは嬉しいがよォ…、恋仲の俺が大丈夫だっつってんだ。そろそろ大人しく引いてくれねェかァ…?」
いい加減にしやがれと、青筋を立て睨みつけた。
牽制の意味も込め、強めに圧をかけておく。
「ッ……!」
俺の纏う空気が変わったのが分かったのか、一瞬怯む藤宮。
これで引かなきゃ俺がいよいよブチ切れそうだ。
頼むから早くどこかへ行ってくれと、強めにガンを飛ばしていると、
「実弥さん…」
ずっと俺に寄りかかっていた葉月が、何か言いたげに起き上がる。
「大丈夫か?」と身体を支えてやると「はい」と微笑み返してくれた。