第5章 大変だ、飯がない!
七丁目の米屋から三丁目の葉月の店までを一気に駆け抜けた。
行きは歩きで数時間かかったが、帰りは1時間もかからなかったのではないだろうか。
あまりの速さに着いた頃には葉月は吐かなかったものの、自力で立てないほど目を回していた。
大丈夫…か?
そういや米は?
急いで荷車を確認してみるが、五俵の米俵は乗せた時のままの常態を維持していた。
かなりの揺れだったと思うが…
よく落ちずに耐えたな米俵。
その米俵を運んだ煉獄だが「あの重さを1人でか!」と、この騒動を見物に来ていた町人にわらわらと囲まれていた。
「あんたスゲェな!何モンだい⁈」
「ちょいとウチの店にも来とくれよ!」
「うむ!力仕事は任されよう!」
…お前は何屋になるつもりだよ。
別の店へ調達に向かった藤宮も戻って来たところで、無事予定通り全ての食材を調達出来たようだ。
「葉月、大丈夫かァ?」
「さ…実弥さんすごいですねぇ…、私、こんなに…速く移動したの…初めて、です…」
…大丈夫じゃねェなこりゃ…
送ってやりてェところだが、もう出ねェと俺も間に合わねェし…
座り込んじまってる葉月を一度抱き上げ、店の入り口に置かれている長椅子に座らせた。
「爽籟!」
名前を呼ぶと、上空を旋回していた爽籟はスーッとこちらへ向かって降りてくる。
「隠の後藤を呼んで来てくれェ」
「マカセロォ!」
再び上空へ舞い上がり、風に乗って勢い良く目的地へと飛んで行った。
寄り掛かる所がないと辛いかと思い、俺も一緒に腰を下ろし葉月を俺の方へともたれかけさせる。
「不死川さん!」
急に声を掛けられ顔を上げると、向こうの方から藤宮が駆け寄って来る所だった。
「今日はありがとうございました。助かりました!」
「いや、俺は大したことはしてねェが」
「そんな事ありません!本当にありがとうございます!… 葉月ちゃん、どうしたんですか?」
本命はそっちか。
そうだとは思ってたがなァ。
さっきっからチラチラこっちを窺うように見てたのは知ってんだよ。