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小春日和 【鬼滅の刃 不死川実弥】

第5章 大変だ、飯がない!







と言うわけで、今に至るんだが…

「お前は戻らなくて良かったのかァ?」

さっき女将さんは女達は店から近い所で良いと言っていたのだ。
終わればすぐ家にも帰れるだろう。
その方がいいと俺は思ったんだが…

「いいんです」

「帰り遅くなっちまうぞォ?」

薄暗い帰り道を歩かせるのは心配だと告げる俺に、葉月は少々声を荒げた。

「いいの!だって…」

葉月にしては珍しく、駄々っ子のような口ぶりで俺の袖をきゅっと握りしめると、

「一緒にいたいから…」

小さな小さな声でぽつりと、ささやかな願いを呟いた。

「でも足手纏いでごめんなさい…」

…あぁ、お前は本当に…

「…んなわけねェだろォ」

俯く葉月の肩を引き寄せきゅっと強めに抱いた。
口にはしねェが、俺もお前と同じ気持ちなんだと分かるように。

俺だって、一緒にいてェに決まってる

「…実弥さん」

「なんだァ」

「歩きにくいですね」

「それがどうしたァ」

「いいえ、ふふっ」

確かに歩きにくい。
が、別に葉月は嫌がるでもなく。
ふふっと笑う葉月はむしろこれを楽しんでいるかのようで…

もう、言わなくても分かるよなァ

「可愛いヤツ」

そう言えば、葉月はこちらを見上げ、頬を染めてはにかんだ。



こんなやり取りをしていたのだが。
隣で一緒に荷車を引く煉獄は気付いていただろう。
あんなにあっちこっちに目を奪われ騒いでいた奴が、途中から急にふと静かになった。
気を利かせたのだろう。
気付かないフリをして、前だけをみて歩いていた。

やっぱりいい奴だなァ、煉獄は。









その後、なんとか米屋へと辿り着いた俺達。
無事に米俵を調達したが、店へ戻ろうと歩き出した頃には既に夕方。

「オイ煉獄!そろそろヤベェ走るぞォ!」

「あいわかった!」

普通に走っていたら日没になっちまう。
仕方がないのでここは呼吸を使って走る事に。

「葉月!しっかり掴まってろォ!舌噛むなよォ!」

「はい!え?…ぎゃぁあああ!!」

荷車は煉獄に任せ、俺は葉月を抱き上げ一気に走り出した。

とんでもねェ悲鳴はもう聞かなかった事にしてやろう…



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