第1章 幸せのカタチ
店から家まで帰る途中に分かれ道がある。
今日はいつもと違う、細い道の方へ歩いていく。
「どこ行くんだァ?」
「内緒です!」
林の中を暫く歩くと、聞こえてくる小川のせせらぎ。
あとちょっとだ。
ズンズンと歩き、林を抜けるとパッと視界が開け……
「じゃじゃーん!見て下さい!」
目の前には色とりどりの花が咲いた綺麗な花畑が広がっていた。
「すげェ…」
「でしょ⁈私のお気に入りの場所なんです!」
まだ誰にも教えた事がない、私の秘密の場所。
不死川さんだけには知っていてもらいたかった。
貴方だけは、私の特別だから……
「お家に飾るお花摘んでってもいいですか?」
「あァ、いつもここで摘んでくのかァ?」
「はい!選び放題なので!」
私がしゃがんで花を摘み始めると、不死川さんはそこにどかっと腰を下ろした。
「静かでいいとこだなァ」
「はい、何か嫌な事があった時にここに来ると癒されます」
「お前悩みなんてあんのかァ?」
「え!もしかして悩みが無さそうな能天気に見えますか⁈」
「そこまで言ってねェ…」
不死川さんはフッと笑った。
私も釣られてふふっと笑う。
楽しいなぁ。
いつも1人で摘みに来てる時より何倍も楽しい。
ふと不死川さんを見ると、なにやら茎の長い白詰草だけぷちぷちと摘んでいる。
「何してるんですか?」
「まぁ黙って見てろやァ」
「?」
すると、摘んだ白詰草を使って今度はそれを編み始めた。
すごい…編み方がはやい!
どんどん編んで編んで編みまくって…
「こんなもんだろ」
最後に端と端を輪っかになるように繋げれば…
「ほら、出来たぞォ」
「わぁ!花冠だぁ!」
不死川さんお手製の花冠が完成した。
「意外と器用なんですね」
「意外とは余計だろ。まぁ下の妹達によく作ってやったからなァ。これ、やるよ」
「いいんですか?やったぁ!」