第5章 大変だ、飯がない!
「そっか、やっぱり…。そう…なんですね」
なんだかやたらと残念そうな反応をする。
嫌な予感しかしねェが…
今は何も聞かないでおいてやろう。
いや、寧ろ聞きたくねェわ、俺が。
それより…
「テメェは何処のどいつだァ」
「っ申し遅れました!俺は藤宮蒼汰と言います。ここの和菓子屋の息子です」
そう言って律儀に頭を下げられる。
ここの和菓子屋の息子…
女将さんの息子か。
聞きたかったことが一つ分かり、少し冷静になってきた。
「すみません、邪魔はしたくなかったんですが…。俺この後別の所も行く予定なんです。あんまり遅いと暗くなってしまうので」
「それはすまねェ、仕事の邪魔しちまって悪かった」
申し訳ないと頭を下げると、とんでもない!と大慌ての和菓子屋息子。
「時間がねェのは分かったが、葉月を連れてく理由はなんだ?さっき女将さんは女は近場って言ってただろォ」
俺が本当に聞きてェのはこっちだ。
すると和菓子屋息子、藤宮は至極申し訳なさそうに理由を告げる。
「単純に、人数が足りなかったんです。男手は遠方担当で取られてしまっているので。なので葉月ちゃんには急遽こっちに入ってもらったんです」
そう言うことかよ。
疑問が無くなり、俺の苛々も解消されていく。
始めからこうしていれば良かったものを…
さっきまでの自分を振り返り、少しばかり後悔した。
「…どこ行くんだァ」
「米屋です」
こめ…
足止めしてしまった申し訳なさもあり、
「男手が欲しけりゃァ、俺が行くが」
そう提案してみるが
「いえ、お客様にそのような事はさせられません!」
鮮やかにかわされた。
言うことが同じだ。
さすが親子。
「でも時間ねェんだろ?」
「それは、そうなんですが…」
中々首を縦に振らないので、仕方がねェかと諦めようとしたその時…
「話は聞かせてもらった!!」
俺の背後から突如聞こえて来た爆音。
振り返れば…
いつからいたのか。
腕を組み、仁王立ちした煉獄。
……どんな登場の仕方だよ。