第5章 大変だ、飯がない!
二人揃って頭を下げる煉獄と甘露寺。
あの時俺がコイツらを止めていればと思い、俺も二人に倣って頭を下げた。
「あらあら頭を上げてくださいな。気付かなかったこちらが悪いんですから、あなた方が謝ることはないんですよ?今日の事は気になさらずに、また食べにいらしてくださいね」
他の店だったらもしかすりゃァ、出入り禁止になってたかもしれねェ。
女将さんの心の広さに感謝した。
今から店を空けると言うので、俺らは女将さんに従い席を立つ。
店の外へと出ると、ここへ入る時には無かった数台の荷車と、店の従業員がズラリと並んでいた。
…何か始まるのかァ?
不思議に思っていると、列の中にいた葉月がトコトコとこちらへ向かってやって来た。
「妙さん、皆準備出来たみたいです」
「分かったわ。皆行き先はそれぞれ確認出来たみたいね。少し遠い所は厨房の人達で、近場で行ける所は女の子達で。それじゃあ手分けして、食材調達よろしくお願いね」
「「「はい!」」」
全員揃っての返事の後、皆それぞれの行き先へと向かって行った。
…うっかりしていた。
さっき女将さんは食材が底をついたと言っていたのだ。
作るれる物がないから外に出されたと思っていたが、そうではなく…
無くなったものをこれから全て調達しに行かなければならないのだ。
「女将さん、俺も手伝います」
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。大切なお客様にそんな事させされませんわ」
何か出来る事はないかと申し出たが、女将さんにそう言われてしまえばもう何も出来ず。
まぁ客が色々と手出ししてはいけないような気もするので、ここは大人しく引き下がる事にするか。
散らばっていく従業員達の中に葉月を見つけると、従業員の男と共に荷車を引くその背中を静かに見送る。
……ちょっと待てェ。
さっき女は近場でって言ってなかったか?
……。
「胸糞悪ィなァ…」
チッと舌打ちを打ってから、俺は居ても立っても居られず、葉月の元へと駆け出した。