第5章 大変だ、飯がない!
二人が厨房へ入ってから暫く経つが、出て来る気配は全く無い。
中で一体何があったのだろうか。
少し様子を見て来た方が良いだろうかと思い始めたその時、厨房出入口からやっと二人が現れた。
…何やら神妙な面持ちで。
なんだァ?
どうしたのだろうかと暫し様子を見ていると、女将さんは何故か一箇所ずつ卓をまわり、客に頭を下げ始めた。
その間葉月は他の女給に声を掛けてからいそいそと店の外へと出て行く。
そして戻って来た葉月が手に持っていた物は…
店の暖簾だった。
…どういう事だァ?
何が起こっているんだろうかと首を傾げながら、先程の女将さんへと視線を戻してみる。
すると、女将さんが話を済ませた所から客が席を離れ、店を出て行っているようだ。
「不死川!これは一体どうしたんだろうか⁈皆残念そうな顔をして店を出て行っているようだが!」
「俺に聞くんじゃねェ…」
こっちが知りてェわ。
「葉月ちゃん暖簾仕舞っちゃってるけどどうしたのかしら?」
「女将さんが来るまで待つしかないな」
訳も分からず客がぞろぞろと外へと出て行く店内を、只々見ているしかない俺たちのもとへ…
「お騒がせして申し訳ございません…」
女将さんがやって来た。
「女将、皆外へと出て行くが、何かあったのだろうか?」
煉獄の問い掛けに、女将さんは至極申し訳なさそうに、わけを話し始めた。
「えぇ、実は………」
「見てくれ不死川!見事な柄の大皿だ!」
「そうだなァ」
「こちらは履き物屋か!履きやすそうな下駄だ。一つ買って行こうか」
「後にしろォ」
「美しい花達だ。買っていって千寿郎に生けてもらおう!」
「何しに来てんだテメェはよォ!」
先程までいた三丁目の葉月の店から出た俺と煉獄、それから葉月は、そこから大分離れた七丁目の大通りに来ていた。