第5章 大変だ、飯がない!
「おい不死川、貴様甘露寺をこんなにしてどうしてくれる。大好きな飯が食べられなくなったらどうしてくれるんだ」
どうしても俺を悪者にしたいらしい伊黒。
こいつ甘露寺が絡むと皆敵になっちまうんだよなァ。
「どうって…」
どうしてくれると言われても、だ。
俺に一体どうしろってんだ。
そんなに睨まれる筋合いは無ぇと、フィッと顔を逸らした先にいた甘露寺を見てみれば。
さっきまで項垂れていた甘露寺だが、伊黒の心配など何処吹く風。
食えなくなるどころか、さっきおかわりを要求した海鮮丼が目の前に現れると、嬉しそうにそれを頬張り始めた。
…。
食ってんじゃねぇか!
「ついでに言うがな、煉獄は確かにうるさかった。だが不死川、貴様も負けず劣らずうるさかったぞ」
「ァア"⁈てめっ…、俺はそんなうるさくっ…」
なかった、よな?
いや、うるさかったのか?
…
分からなくなってきた…。
だがそう言われ、思い返してみれば。
怒鳴っている時は確かに、うるさかったかも…。
そう思い始めた俺に、こちらを睨む伊黒は、クイクイと顎で甘露寺を指し示す。
…謝れって事かよ!
静かにして欲しかっただけなんだが…
まぁこちらも怒鳴っちまったからなァ。
はぁ、仕方ねェ。
腑に落ちねェ部分はあるが…
チッ、と舌打ちをしてから、少々イラつきながらも「悪かったなァ」と言葉にしてやった。
「静かに食ってくれりゃァ文句は「大変だぁぁー!!妙ー!すぐ来てくれぇーー!!」
俺の言い分は、突如聞こえて来た絶叫によってかき消される。
「なんだァ?」
厨房からだ。
ここのご主人だろう。
何事かと騒然となる店内。
客の対応をしていた女将さんは、何事か!と騒ぎ始める客を落ち着かせながらパタパタと慌てて厨房へと駆けていく。
「お騒がせして申し訳ありません!確認して参りますので少しお待ち下さい!あんなに騒いでどうしたのかしらっ…」
「妙さん、私も一緒に行きます!」
女将さんは近くにいた葉月と連れ立って、急いで厨房へと入って行った。