第5章 大変だ、飯がない!
「空いたお皿下げに来ましたー…、もう全部無い!」
こちらの様子を見に来た葉月が目を丸くして驚いている。
そりゃそうだ。
葉月が離れてから10分も経っていないのだ。
「おいしくって手が止まらなかったの!パクパク食べちゃったわ!」
「うむ!大変美味しく頂いた!」
大満足だと、2人揃ってご満悦だ。
「それは良かったです!そう言えば蜜璃ちゃん、この時間に来るの珍しいね?」
「そうなの。今日は遠くでお仕事でね、いつもの時間にここへ来ると間に合わなくなっちゃうの。でもどうしても食べたくて、お昼前だけど来ちゃったわ!」
念願のここの甘味が食べられて幸せだ、とでも言いたげに、甘露寺葉月はに満足そうな笑みを向けた。
「忙しいのに来てくれてありがとう。ひょっとして皆さんも午後はお忙しい…です?」
「うむ、そうだな!今日は俺も遠方での任務の予定だ!」
「俺もまあそれなりに、遠い」
「大変ですねぇ。…実弥さんも?」
「…そうだなァ。俺も今日は遠い方だァ」
俺がそう言うと、葉月は「そうですか…」とぽつりと呟き、少し淋しそうな表情を浮かべた。
あーあ、すぐ顔に出ちまうなァ。
そこが可愛い所なんだが、させたくねェ顔をされると胸が痛い。
後で思う存分抱きしめてやるから、今は我慢な。
そんな事、さすがにここでは口には出せなくて、心の中で呟いた。
「いつもの時間にはもう行っちゃうんですね……、そうだ!」
いい事でも思い付いたのか、葉月はぱんっ!と手を打ち目を輝かせた。
「お昼ご飯食べて行きませんか⁉︎」
「「「「…昼ご飯?」」」」
一体何を言い出すのやら。
全員揃って首を傾げた。
「葉月ちゃん、ここ甘味屋よねぇ?」
「甘味処で昼飯とは、聞いたことがないな!」
甘露寺と煉獄の言う通り、こういう店で昼飯が食べられるなんざ、今まで聞いたことがない。
もしや、まかないを一緒にどうかとか、そういうことだろうか。