第5章 大変だ、飯がない!
「それもそうだな!申し訳ない!」
あっさりと非を認め、はっはっは!と快活に笑う煉獄。
あまりの潔さに拍子抜けし、怒りを通り越しもはや呆れる。
まぁこれもいつものことだが。
ため息出るわァ…
一方葉月の方はというと、
「え!そうだったんですか⁈実は私もさっき話してたの蜜璃ちゃんの事だったんです!」
思いがけず煉獄と同じ人物の話をしていた事に感動を覚えたようで。
「こんな偶然あるんですね!」と嬉しそうに笑みを浮かべた。
嬉しいのは分かるけどよォ…
煉獄は煉獄で「よもや!君とは気が合いそうだ!」なんてぬかしやがり、葉月に向かって朗らかに笑いかけていた。
ホントの事を知ったらどんな反応をするだろうか。
ついさっきまでは、きっと面白いだろうと思っていたこの状況。
いざ目の当たりにしてみれば…
こんなにも、仲良さげなところを目の前に突き付けられる羽目に。
前言撤回。
ちっとも面白くねェ。
その笑顔を俺以外の男に向けてくれるなと、ドス黒く醜い感情が湧き上がってくる。
が、みっともねェと自分に言い聞かせ、なんとかそれを抑え込もうと必死に耐えてみせる。
「私の話をしていてくれたなんて、嬉しいわぁ!」
そこへ感極まった甘露寺が登場し、
「ぐはぁっ…!」
葉月を握り潰す勢いの、熱い抱擁。
畜生、我慢の限界だ。
「俺の葉月を絞め殺す気かァ!」
俺は葉月を甘露寺から引き剥がし、自分の腕の中へとおさめた。
しかも、アァ…言っちまった。
“俺の“とか、こんな所で…クソッ。
「きゃっ、不死川さんたら大胆ね!」
「よもや!どうした不死川、破廉恥だな!」
「ごちゃごちゃうるせェ!大体なァ、こいつに愛想振り撒かれていいのも抱きしめていいのも俺だけなんだよ!覚えとけェ!」
勢い止まらず更にとんでもないことを言い放つ俺。
何やってんだか。
誰か止めてくれ…
「独占欲の塊だな!」
「黙っとけェ!」
店のど真ん中で喧しく騒ぎ立てる俺達に、伊黒から冷ややかな視線が送られ、
「心底どうでもいいんだが。それより早く席に座らせろ。甘露寺腹は空かないか?早く食べたいだろう」
「そうね、早く食べたいわっ」
真っ赤な顔の葉月が俺の腕の中でこくこくと頷いた。