第5章 大変だ、飯がない!
「何にします?」
「どうすっかなァ、昼前だし」
「それならわらび餅とかどうですか?いつものよりは軽めだと思うので、お昼ご飯も普通に食べれると思いますよ?」
この後の事も考え、さりげなく提案してくれる葉月の気遣いを嬉しく思った。
因みに葉月が言ってたいつものってのは…
言わなくても分かんだろォ?
「おー、んじゃソレ」
「はい!」
「では俺も、控え目にするとしよう。
いもようかん!10皿頼もう!」
「どこが控えてんだァ!」
すかさず突っ込みを入れてしまった。
「オイ煉獄、後の事考えろやァ!そんなにイモ食ったら腹に溜まって昼飯食えねぇだろォ!」
「そうか?本当なら20皿頼みたいところをぐっと抑えて半分にしたんだ。こちらの中の餡がさつまいもの大福も捨てがたかったがな」
本当に食べたかったのだろう。
煉獄はお品書きの大福を指差しながら、残念そうに眉を下げた。
「よかったら、お持ち帰りもできますよ?」
しょんぼりとしていた煉獄は、葉月の言葉にぱぁっと目を輝かせた。
子どもかよ。
「本当か⁈では、そうさせてもらおう!家族分の土産も合わせて、100個ほどお願いしたい!」
オイオイ何人家族だテメェん家はァ…。
驚きを通り越し、もはや呆れる。
そんな煉獄の桁外れの注文を葉月は驚く事なく、むしろすんなりと受け入れていた。
「かしこまりました!100個ですね!ちょっと数が多いので、お帰りまでに用意出来るか確認しますね」
普通に受け答えする葉月に、驚いたのは煉獄の方だった。
「君は、驚かないのだな」
「え?何をです?」
「いや、100個も注文すれば、普通は驚くだろう?」
そういう自覚はあったんかい。
初めはキョトンとしていた葉月だが、煉獄の話に「あぁ!」と納得すると、
「さっきの実弥さんの注文よりは少ないですし、それに…、煉獄さんみたいにたくさん食べる方を知っているので」
そう言って、にこっと微笑んだ。