第5章 大変だ、飯がない!
「では、席の案内を頼んでも良いだろうか!」
「はっ、はい!」
落ち着く間もなく、葉月は頬を染めたまま頷いた。
「実弥さんは今日はどうされますか?」
「俺は今日はいい…いや、折角だから寄らせてもらうわァ」
俺の返事を聞くと嬉しそうに笑う葉月。
こんな事で喜んでくれるなら、毎日でも来てやりてェところだが、柱である今の俺にはそこまでの時間の余裕は無く…
まぁ一緒に暮らせるようになれば今より会える時間は格段に増える。
それまでは、我慢しといてもらうか。
いや、俺が我慢だなァ…
「お席ご案内しますね」
「葉月、悪ィ。先にこっちの注文頼みてェんだが。持ち帰りで」
案内を始めようとする葉月を一度呼び止め、懐に忍ばせていたものを葉月へ手渡す。
受け取り確認すると、葉月は驚きの声を上げた。
「わぁ!すごいっ、こんなに沢山!」
俺が渡したのは、胡蝶から預かったここの店の甘味がびっしり書かれた用紙だ。
蝶屋敷にいる人数分とは言っていたが、書かれているのはきっとそれ以上だろう。
それにこの品数、ここの店の甘味全部書いてんじゃねェかァ?
「実弥さんごめんなさい!“あいすくりん“って言うのは無いんです…」
…。
胡蝶のヤツ、適当に書きやがって。
聞き慣れない単語が飛び出し気になったのか、煉獄が興味津々で葉月が手に持つ用紙を覗き込んだ。
「よもや!不死川!これを君一人で全て食べるのだろうか!君は本当に甘い物が好きなのだな!」
「こんなに一人で食えるかァ!何人分あると思ってんだァ!」
「知らん!だが俺は食える!」
「アァそうかよ!」
どんな胃袋してやがる!
「俺じゃねェ、胡蝶だ。蝶屋敷の奴らと食うから土産で持ってこいって頼まれたんだよ」
軽く説明してやると、
「そうか!胡蝶はああ見えて意外と食いしん坊なのだな!はっはっは!」
胡蝶が怒りそうな解釈をした煉獄。
いや、食いしん坊はテメェだろォ…。
「それからなァ、テメェに甘い物がどうとかそんなん言った覚えはねェんだが…」
「この間甘露寺から、“不死川がおはぎをとても美味そうに食べていた“と聞いた。てっきり不死川は甘い物が好きなのかと思っていたんだが…、違ったか?」
「…」
甘露寺ィ!!