第5章 大変だ、飯がない!
「不死川も甘味を食べに来たのか!」
「いや、俺は…ちと野暮用でなァ」
「君は野暮用で甘味処へ寄るのか?」
「何でもいいだろがァ!テメェは食いに来たんならさっさと中へ入れェ!」
「あぁ!そうさせてもらおう!」
質問に答えるのが面倒になり、声を荒げた俺を全く気にする事なく、煉獄は二カッと笑う。
「いらっしゃいませ!実弥さんのお知り合いなんですね」
「アァ、鬼殺隊のなァ」
「うむ!俺は煉獄杏寿郎だ!不死川と同じく柱を務めている!」
「わぁ、偉い方なんですねぇ。私は水篠葉月と言います。よろしくお願いします」
葉月はぺこりと頭を下げた。
「こちらこそよろしく!葉月さんは不死川と親しいのだな。友人なのだろうか?」
「そう、ですね。友人…と言いますか…」
煉獄の質問に歯切れの悪い返答をする葉月。
おそらく俺が原因だ。
俺は鬼殺隊の奴らには極力関係を言わないようにしている。
と言うのも…
宇髄に知られたくねェ。
噂にでもなりそれが宇髄の耳に入れば、揶揄われるどころか葉月の店に嫁3人連れて押し掛けて来そうだ。
そんな事になれば、葉月が1番困るだろう。
それは避けたい。
だから俺は、ホントに口が硬そうな奴にしか言わないようにしている。
それを知ってる葉月は、本当のことを言っていいのか迷っているような、そんな顔で俺を見上げてきた。
まぁ煉獄なら余計な詮索はしないだろうし、周りに言いふらすこともないだろう。
心配すんなと俺は葉月に笑って見せる。
「煉獄、葉月は俺の…」
言いかけた俺の言葉を遮り、
「恋仲か!」
「…」
ど直球で正解をぶつけて来た。
俺が黙ったのを肯定と捉えたのか、煉獄はどんどん話を進めていく。
「それは良かった!不死川にこんなに可愛らしい恋仲のお嬢さんがいたとは!めでたいな!はっはっはっ!」
すると、ぼんっと音を立てたように葉月の顔が一気に赤くなる。
あぁそりゃ可愛いだろォ。
俺の葉月だ、当たり前だ。
だが今はそのくらいにしてやってくれ。
こんな赤い顔のまま仕事させんのは可哀想だ。