第2章 季節が変えるのは
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志津「ふっ女が侍だなんて本気なの?なれるわけないでしょう。だって女なんだから」
まゆ「えぇ、女でございます。だからなんだというのか…稽古があります故、そろそろ御無礼いたします」
まゆは走った、走って走って走った。家に帰るなり稽古場に行き、倒れるまで木剣を振るった
それからというもの、まゆは志津に会うたびに「邪魔だから嫁に行け」と言われていたが、それでも心は折れなかった
この日までは…
まゆと志津が八百屋で会ってから二年後、継国家に届け物を頼まれ久し振りに継国家の門を潜った
まゆ「あぁ…憂鬱…」
まゆの気と身体は鉛の如く重かった。志津に会えば「嫁げ」と言われ、巌勝に会ったら苦しくなるとわかっていたからだった
継国家の門を潜ると「父上、母上見てみて〜」という子供の声と「うむ、良いではないか。なぁ、志津」と巌勝の声が聞こえてくる
まゆ「(あぁ、私だけなんだ…今でも想っているのは…)」
思い知らされた…
永遠だと思っていたアノ日の誓いを、時間が月日が季節が巌勝の心を変えてしまったとまゆは思い知らされたのだった
巌勝「まゆ、久し振りだな…(また綺麗になった…)」
志津「あらぁまゆちゃんいらっしゃい。こちらへどうぞ。ねぇ、巌勝さん」
志津は巌勝の腕に絡み付きまゆをに笑顔をむける。それは、まるでまゆを嘲笑うからの様な、何処までも歪んだ笑顔だった
まゆ「すみません志津さん、届け物しに来ただけなので遠慮致します、稽古がございます。巌勝お兄様お久しぶりでございます。では、ここに置いておきますね」
まゆは志津の誘いを断り、荷物を縁側に置いて帰っていった
巌勝「まゆ…」
志津「巌勝さん、そんなにあの子が気になりますか?」
まゆが帰った後、巌勝の口からまゆの名を切な気に呼ぶ声が聞こえ、志津が問う
巌勝「…………私室に行く…悪いが一人にしてくれ」
志津「いい加減にしてくださいませんか?あの子の部屋の方をずっと見ていたり、あの子を見かけると目で追っています。巌勝さん自覚ありませんでしょう」
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