第2章 季節が変えるのは
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まゆ「巌勝さん…」
巌勝「仕事なら用心棒でも何でもする、まゆに苦労はさせない。だから二人で逃げよう」
巌勝が縁談話を聞いたのだろう。それでも尚、親も家も捨てる覚悟で自分を選んでくれる巌勝の気持ちが嬉しかった。しかし、それに答えてはならない。巌勝は「日本一の侍」になるのだから
まゆ「それは出来ません…」
巌勝「何故だ!!まゆ!!家を捨てた私に等興味がないか?」
巌勝は悲しみを浮かべ困惑し、まゆの目からは大きな涙が零れ落ちた
まゆ「…違う!!巌勝さんは日本一の侍になるのでしょう!?そんな事しようものなら、なれるものもなれません…」
巌勝「家を捨てたからといって侍をやめるわけではないのだぞ!」
話し合いが続く中、巌勝は食い下がるがまゆは絶対に首を縦にはふらなかった
まゆ「父上から全て聞き、相手の方は殿様縁の方とお聞きしました…ですから一介の武家の娘の私なぞより巌勝さんに相応しい相手、婚姻関係を結べば出世致しましょう」
巌勝「まゆはそれで良いのか!!」
まゆは黙り込み今にも消えてしまいそうな表情をしている。巌勝の縁談相手については、風呂に行く途中父に会った時に告げられたのだった
巌勝「まゆ、答えろ!!」
まゆは泣きたいのを必死に堪えながら巌勝の問に答えた
まゆ「嫌、嫌に決まってる。でもダメなの、お願いだから別れてください。父上に言われた…巌勝君の為だと、巌勝君を愛しているなら引けるな?って。私、巌勝さんの足枷になりたくない…」
まゆは『最後位は良い女でいたい』と、気丈に振る舞い、凛とした表情で巌勝を見上げる。その瞬間巌勝は悟ってしまった『あぁ、本当に終わりなのだ』と。この事を朝には既に知っていたとすればまゆの異変も頷けた
巌勝「私達は本当に終わりなのだな…それでもまゆを愛している。それはこれからもずっと変わらない。それだけは憶えていてほしい…」
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