第2章 季節が変えるのは
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巌勝は驚いていた。逢い引きの誘いは何時も巌勝からで、まゆは「二人で居られたら稽古でも幸せ」と、常日ごろから言っていたのでまゆから言い出す事は全くなかったからだ
バシッ バシッ ガッ
まゆ「ぐっ…!」
巌勝「大丈夫か!?すまない、痛かったか?しかし稽古に身が入っていないようだが具合でも悪いのか?」
まゆは顔や態度には出さないが、やはり心の中がグチャグチャで稽古中も上の空であった。いつもは避けるか受け止められる筈の攻撃をモロにくらってしまったのだった
まゆ「すみません!具合は大丈夫です、元気元気♪」
巌勝「なら良いが…今日は少しおかしい、何かあったのか?」
巌勝はまゆの様子がおかしいのに稽古が始まる前から気がついていた。元々鋭く頭の良い巌勝が、愛する女の異変に気が付かないわけがない
まゆ「何でもないです!あっ、朝餉食べてないからかなぁ〜」
まゆは食欲が無く、朝餉を抜いていたのは本当なので、それを理由に誤魔化した
巌勝「そうか…ならば少々早いが出かけようか。何か食べに行こう」
まゆ「はいっ!(お腹なんか空いてない、でも悟られたらだめだよね…)」
この心の奥を悟らせまいと必死に笑顔を作り返事をしたが、何処か痛々しいのを巌勝は気がつく
巌勝「まゆ…本当に何かあるなら言ってくれ。私はそんなに頼りない男か?」
まゆ「違う!私にとって巌勝さんはカッコよくて優しくで頼りになって、愛おしくて仕方がない人だよ。だからそんな事言わないで…」
まゆは巌勝の言葉を否定し、自分の気持ちを言った。本当はもう言ったらダメな事だが、どうしても譲れないものはあるのだ
巌勝「あぁ、すまない…。私もまゆが可愛くて愛おしくて仕方がない。さぁ行こう、何が食べたい?(やはり様子がおかしい…)」
まゆ「(うどん位なら食べられるかな…)うどんが食べたいです!」
巌勝は「わかった」と頷きまゆの手を引いて外へとむかった
まゆ「巌勝さん、肩抱いて欲しいです。この前見かけた男女がそうしていて、良いなぁって!」
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