第2章 季節が変えるのは
・
政孝「でもでもだってではない。継国家の、巌勝君の為でもある。巌勝君を愛しているならば、引けるな?」
まゆ「巌勝さんの為……?そんなの狡い…引くしかなくるではないですか…」
巌勝の為だと言われたら従うしかなかった。まゆは本当に巌勝を心の底から愛しているのだ。まゆの思考に一瞬だけ『駆け落ち』という言葉も浮かんだ
だが、自分の愛する人は『日本一の侍』になる男。駆け落ち等すれば、巌勝が認められる機会が減ってしまうのは事実である。そうなれば巌勝の夢は遠ざかってしまうのだ
政孝は目を閉じまゆの返事を待つ
まゆ「わかりました…会うのは今夜で最後に致します…」
政孝は「わかってくれるか…すまない、本当にすまない。巌勝君はまだこの事を知らぬ、今夜は好きにしなさい。夜に話すと忠義は言っておった故…」と娘に頭を下げたと同時にまゆは政孝の部屋を飛び出し自分の部屋に駆け込んだ
巌勝との別れを決意したまゆは机に突っ伏し静かに泣いた。頭では解っているが心が着いていかないのだ
まゆ「ううっ…ひっく…もう巌勝さん迎えに来ちゃうなぁ…」
自前に話を聞いていた兄、茂と旬は可愛い妹が心配になり、まゆの部屋の前まで来たが、かける言葉が見つからなかった為、そっとその場を離れた
その後少し立ち、孝之が廊下をパタパタと走りまゆを呼びにきた
孝之「巌勝が迎えにきているがどうする?無理して会うことはないぜ」
まゆ「孝之兄さん…父上に聞いたの?大丈夫、今日で最後だから…せめて今日だけは、ね?」
そう言うなり、『泣きはらした顔なんて巌勝さんに見せられない』と顔を洗にいった
まゆ「巌勝さん!おはよう御座います♪(あぁ、貴方が遠い…)」
巌勝「まゆ!会いたかった。昨晩会ったばかりなのに…」
巌勝はまゆと別れさせられ、自身の縁談話が持ち上がっている等とは知らずにいた
まゆ「稽古行きましょう!でも午後からは巌勝さんと二人で出かけたいです!逢い引きがしたい…ダメですか?」
巌勝「ダメなわけ有るか。そうしよう(まゆから逢い引きを言い出す等とは珍しいな…)」
・