第2章 季節が変えるのは
・
巌勝とまゆは互いを大切にし、幸せを噛み締めながら過ごしていた。そんなある日の事
付き合い始めてから一年が過ぎた頃。まゆは朝から父、政孝に私室に呼ばれた
まゆ「父上、何でしょうか」
政孝「まぁ、座りなさい」
いつも明るく元気な父の顔が恐く見え、まゆに緊張が走る
まゆ「はい………」
政孝「単刀直入に言う。巌勝君と別れなさい」
まゆは一瞬何を言われたのか理解できなかった。しかし直ぐに理解し、父に食って掛かる
まゆ「いきなり何を仰っているのですか?一年前お許しを貰っています」
政孝「まぁ聞きなさい。巌勝君の父、忠義が病にかかり、早急に跡取りが必要になった。巌勝君は歳頃が合う女性との縁談がもちあがっている」
まゆは拳を握り締め、震えながらも父の話を聞いていた。しかし、愛する恋人に他の女との縁談話。誰が納得出来るであろうか
まゆ「嫌、嫌よ!!別れたくない。巌勝さんが他の女性とだなんて嫌だ…ううっ…」
政孝「仕方なかろう。お前はまだ子が産めぬ。我ら侍というのは戦に出向かねはならぬ、いつ死ぬかわからんのだ。お前も侍の子ならわかるだろう?」
泣き出すまゆを政孝は諭すように言うが、まゆは「嫌だ嫌だ」と泣きじゃくる。しかし納得させねばならない
忠義が政孝に「本当にすまない。私とてまゆに嫁に来てほしいが…政孝わかってくれ」と土下座迄したのだ
まゆ「あと少し待ってくれたら産めます。否、いまの身体で頑張って産みますから!!別れろなんて仰らないでください」
まゆは「お願いします父上…」と、今にも消え入りそうな声で呟いた
政孝「私はお前に幸せになってほしい。だがしかし、その未熟な身体で子を宿し産む等冗談じゃない。お前が死んだら私はどうしたら良いのだ」
まゆ「でも…嫌なものは嫌です!」
政孝にとってまゆは目に入れても痛く無い程の可愛い娘。今、巌勝と一緒になったとしても、危険過ぎる出産などさせたくなかった。それにまゆはまだ十三歳、見合い云々でなくとも良い出会いは、この先もあるだろうと思っている
・