第5章 回りだした歯車が鋭すぎる
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竜「チっ…巌勝、自分の嫁がまゆに会うたびに何て言ってたか知ってるんかよ」
巌勝「知らぬ…」
孝之「お前には言わなかったけどな、まゆは志津さんに会う度に邪魔だから嫁に行けとか、夫は私を愛してくれるとか言われてたみたいだぜ。偶々茂兄さんが聞いてたらしい」
旬「そんでまゆは家に居るのが怖いと言い始めてな…それでも日本一の女の侍になるってよ。巌勝と約束したから、それを果たそうと必死で木剣を振るった」
隼人「巌勝、お前は本気なのだな?今はただの幼馴染に戻っただけだとしても…お前の事。そこまで好きならばまゆとの将来も考えているのだろう?」
実のところ隼人としてはまゆを縁壱に嫁がせたいのだ。縁壱がまゆを好いているのは、この二年で分かっている。まゆも満更ではないのだ。性格も剣の強さも非の打ち所がない男故、何が有っても妹を守り抜くだろうと思っての事だった
巌勝「はい、今度こそはまゆと共に在りたいです」
御影兄弟の目の前にはプライドが高く冷静沈着。そんな大の男が涙を見せ土下座をしている。そして、今度こそはまゆと共に在りたいと言う
隼人達にも正直、まゆの気持ちが巌勝と縁壱、どちらに向いているのかは分からない
巌勝「その節は誠に申し訳ございませんでした。お願い致します。まゆの側に居させてください」
満更でもない様子ではあるが、まゆにとってどちらも単なる幼馴染で他に好いた男が居るかもしれないし、誰も居ないかもしれないのだ
隼人「巌勝、頭を上げてくれ」
何よりも本人の気持ちが大事だし、幸せは自分で決めるべき事。御影兄弟は妹に幸せになってほしいだけである。よって、隼人の出した答えは…
隼人「まゆが良いなら俺達はそれで良い」
巌勝「隼人殿…ありがとうございます」
隼人「だが、一つだけ聞かせてくれ。お前が妻と子、家も財産も全て捨てたのは武の為だけか?」
巌勝「…いえ……鬼殺隊には妻帯者も居ます。武の為だけであれば捨てる必要はありませぬ。しかし私はまゆと居たいが故、非道を承知の上で妻と子を捨てました。せめて家と財産を持たせれば暮らしていけると…」
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