第5章 回りだした歯車が鋭すぎる
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巌勝「今すぐ気持ちに応えてくれなどとは言わない。だが信じてほしい。まゆを愛する気持ちに嘘はないから…」
まゆ「……信じますから泣かないで。私が悪者みたいじゃないですか…(悩みとか自棄酒とか、この四年間はなんだったの?自分が馬鹿みたい)」
まゆへの気持ちと、今までの想いが溢れてしまったのだろう。巌勝は自分では気付かないうちにポロポロと涙を流していたのだった
巌勝「幼馴染からで良いからまたお前に触れたい、甘えてほしい。だめだろうか…」
まゆ「縁壱お兄様にも甘えちゃいますけど、それでも良いなら…」
『縁壱にも甘えたい』これがまゆの嘘偽りない本音である。一体どういう事なのか、まだ誰にも分からない
巌勝「構わん、まゆがそうしたいのならば…」
まゆ「おかしな嫉妬もしないでくださいね?」
まゆとしては嫉妬されて、なし崩しに身体を結んで寄りを戻すなんて事はしたくなかったのだった。付き合っていた当時の巌勝なら十分に有り得るため釘を差す
巌勝「わかった、従おう」
まゆ「ありがとうございます!では少しお話しましょうか…あっ、縁壱お兄様抱っこしてください♪(私に出来るのかなぁ〜、どうしても志津さんがチラついてぎこちなくなる…巌勝さんを信じてないわけじゃないんだけど。あぁぁぁーもう!!頭の中ぐちゃぐちゃだよっ)」
縁壱「私で良いなら…おいで(まゆは今、心の中で葛藤しているのだろうな)」
喋るより長い考え事をしつつも縁壱の膝に収まった。まゆは縁壱の隣を指差してこちらに誘う
まゆ「巌勝お兄様ぁ、寂しいからこっち来てくださいませんか?」
巌勝「手を握っても良いか?」
巌勝はまゆに了承を取ると、壊れ物を扱う様に、そぉーっと優しく手を握った。まゆは内心複雑ながらも巌勝の手を握り返す
まゆ「はい!久し振りだぁ〜(本当に久し振り…指を絡ませ合うなんて二度と無いと思っていたのにね…)」
巌勝「相変わらず小さくて愛らしい手だ…」
巌勝はまゆに微笑み、まゆは照れ臭そうにニコリと笑う。それを目の当たりにした縁壱は思う『兄上には勝てない』と
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