第5章 回りだした歯車が鋭すぎる
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まゆは、のらりくらりと交わしたい。現実逃避の為に酒をガバガバ飲んだのだ。正直な話、気分を壊されたくない
まゆ「なんかありましたか〜?」
巌勝「四年前の事なのだが…」
まゆには、何の話かは大体察しがついている。だからこそ話したくないのだ
まゆ「もぅ良いんです!私は大丈夫ですから、どうか気にしないでください♪」
巌勝「まゆ…弁解をさせてほしい」
まゆ「何の弁解なんですか?要りませんから…」
まゆの声色が低くなる。良い気分が壊れると酔が覚めるタイプらしい
巌勝「まゆっ!お願いだから…」
まゆ「嫌。巌勝お兄様は私を忘れて他の人を愛した。約束したのに…馬鹿だよね、私ずっと両想いのままだって想ってた。でも、私の片想いになったんだよ(私との過去を縁壱お兄様に話したのね…)」
巌勝「その事で話があるのだ。そのままで良いから話を聞いてほしい。縁壱も聞いておいてくれ」
縁壱「はい、兄上。まゆ話だけでも聞こう」
縁壱が困ったように眉毛を下げるとまゆは居た堪れなくなった。挙句に巌勝の悲しげな顔に負け、取り敢えず話を聞く姿勢をとる
まゆ「…わかりました」
巌勝「ありがとう。私はずっとまゆを忘れられなかった。妻といる時もまゆの事ばかり考えていたのだ。二年前、嫁に行くと告げられた時には発狂しかけた…それ迄はお前を連れて逃げられる日が来ると思っておった。だが、叶わぬ夢となった…」
まゆと縁壱は黙って巌勝の話を聞いている
巌勝「私は妻と居て幸せだと思った事はない。別れる時に言っただろう、私の心はまゆだけのモノだと…あの時から何も変わっていない」
まゆ「お話は分かりました。しかし私は…」
まゆは疑心暗鬼になっている。あんなに仲睦まじい姿を見せられ、今になって『気持ちは変わってない』と言われても困るだけである
無論、本当は嬉しくて仕方がない。しかし、本当に今更なのだ
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