第5章 回りだした歯車が鋭すぎる
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縁壱はまゆを姫抱きにしたまま巌勝に頭を下げ、本部へと帰っていく。巌勝は去っていく縁壱の背中を、憎悪を含ませた顔で見送ったのだった
巌勝「どういう事だ…お前は俺から自信ばかりでなくまゆまで奪うのか!縁壱、お前にまゆは渡さぬぞ!!」
巌勝は両膝をつき、涙を流しながら両手で頭を掻きむしる。声にならない胸の痛みと、黒く禍々しい感情に支配され咽び泣いた
縁壱と巌勝の再開から数日後、竜の鴉から連絡を受けた縁壱が、巌勝を待ち合わせ場所まで迎えに行っている。その間まゆは桃太等の仲の良い隊士や、隼人を含めた他の柱達と稽古をしているが雰囲気も暗く、溜め息ばかりついていた
まゆ「はぁ…」
隼人「まゆ…お前の気持ちは分からなくもない。しかし、意識しているのはお前だけなのだぞ?巌勝は志津殿と子供と幸せだった。見ただろう、その幸せな姿を」
隼人はまゆに危うさを感じていた。任務はしっかりこなすし元気に振る舞っているが、やはりどこか辛そうのである
まゆ「やっぱそうですよね。切り替えなきゃ(あぁ、そうだった。巌勝さんの幸せな姿を私は見たんだ…)」
隼人「あぁ。ほら、縁壱が帰って来たぞ(巌勝、頼むからまゆを揺さぶるような真似はしないでくれよ)」
本部の外にある稽古場に縁壱と巌勝が連立ってやってきた。お館様に巌勝の入隊許可を貰ったらしくその場に居る者に自己紹介をしている
まゆ「縁壱お兄様!おかえりなさい♪巌勝お兄様、お待ちしておりました(いつも通り、いつも通りに振る舞わねば。意識してはダメ!)」
縁壱「まゆ、ただいま。良い子にしておったか?」
縁壱は「はい!」と元気に返事をするまゆの頭を撫でている。巌勝は一瞬険しい顔になるが直ぐに表情を戻した
まゆ「巌勝お兄様、また一緒に稽古が出来るのですね!嬉しいです♪(嬉しいよ…でもそれ以上に苦しいの…)」
巌勝「私も嬉しいぞ。綺麗になったな、少し背が伸びたか?(あぁ、早くお前が欲しい)」
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