第5章 回りだした歯車が鋭すぎる
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巌勝「まゆ!何故お前は嫁に行くなどと嘘をついたのだっ」
まゆ「ちょっ、巌勝お兄様、離してください…」
縁壱「兄上は一体どうなされたのですか(嘘…兄上には嫁に行くと言ったのか。でも何故…)」
巌勝「すまない。痛くはないか?(ここでまゆに引かれてしまっては取り戻せぬ…)」
まゆ「はい、大丈夫です…それより、巌勝お兄様には守るべき家族が居られます故、あまり危険な事はなさらない方が良いのではないでしょうか。ねぇ、縁壱お兄様」
縁壱「兄上、それならば鬼殺隊はあまり勧めることは出来ませぬ。ご家族を心配させてしまいますから…」
まゆは思う『来ないで、私の行き場が無くなってしまうから』と…。巌勝と別れたアノ日から、独りでずっと泣いていたまゆの心が、ビリビリに張り裂けてしまいそうだった
巌勝「私は武の為ならば家も家族も捨てる覚悟だ、妻と子に家も財産も全てくれてやる(力が手に入り、まゆが私の元に戻ってくれば家など、家族など…どうでも良い!!)」
巌勝は幼い頃より武の道を歩き、只管に努力をしてきた。しかし知ってしまった、己が哀れんでいた者は己より優れていると
縁壱「それ程の覚悟を…(やはり兄上はお強い人だ)」
そして、自分の家の都合で別れた愛してやまない女が目の前に居るのだ。巌勝にとっては、この好機を逃すわけにはいくまい
まゆ「………(私はどうしたら良いの?何で家族を選ばないの?あんなに幸せそうだったじゃない!誰か教えてよ…)」
縁壱「まゆ、ずいぶん顔色が悪いがどうした、疲れたか?」
縁壱は元気がなく、松明の灯でも分かる程に顔色を悪くしたまゆを気にかけた。その声は優しく、愛する者に囁く様な甘さを含んでいた。それに巌勝が気が付かないわけがなく、苛立ちが増す
まゆ「少し…最近任務が立て込んでたじゃないですか、だからかな…んにゃ!?」
縁壱「そうだな、ならば帰りは私が運ぼう」
縁壱はまゆを慣れた手付きで姫抱きをし、それを見て唖然とする巌勝に縁壱は告げた
縁壱「では兄上、準備が出来ましたら一日前位に、隼人殿か竜に言ってください。私が直接お迎えに上がります故」
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