第5章 回りだした歯車が鋭すぎる
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まゆが準日柱に就任し、鷹男さんに出会ってから二年の歳月が過ぎたある日の事
鷹男「カァー!今スグ日柱トまゆデ北へ向カエ」
日縁「戦場ニテ兵士ガ食ワレテイル」
縁壱「分かった」
まゆ「はいよっ」
二人は返事と同時に走り出す。暫く走っていると町を大きく外れ、雑木林が続く中、遠くに松明の灯が薄っすら見えてきた
縁壱「………まさか」
現場に近づくにつれ、縁壱は見知った気配を感じていた。しかしまゆは、縁壱ほど気配に敏感ではないので気が付かない
縁壱「………(この先に兄上が居るのか?兄上、只今参ります。どうか無事でいて下され!)」
まゆ「縁壱お兄様…?(縁壱お兄様が超絶何を考えているかわからない顔してる!!どんな気持ちの顔なのですか?)」
縁壱が更にスピードを上げたと思えば、一瞬で鬼を片付けていた。少し遅れて縁壱より離れた所にまゆが居る
まゆ「私要らなくね?ねぇ〜縁い……えっ?」
まゆの視線の先には嘗ての恋人である巌勝が居た。幸い巌勝の死角にいる為、気付かれてはいないが時間の問題だろう
縁壱「申し訳ございません、兄上。私が遅れた為、兄上の配下の者を死なせてしまいました…」
巌勝「縁壱…(何故お前が私の目の前に居る、この幼少期とは比べ物にならぬ力…一体何なのだお前は!!)」
まゆは上手く呼吸が出来ず思考も回らない。しかし、見つかりたくない一心で気配を消して近くの木に隠れた
まゆ「巌、勝さん…(ダメだ…ダメだダメだダメだダメだ)」
巌勝を視線に捉えた瞬間、心の奥底で燻っているものに火が再び点いてしまいそうになるのを抑えようと足掻いている。まゆの本能が『アッテハイケナイ』と訴えかけるのだった
まゆ「このまま帰ろうか…ううん、勝手に帰ったら怒られるよね。帰りたいよ…(神様、どうか巌勝さんと会いませんように。縁壱お兄様が言わないでくれますようお願いします…)」
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