第3章 ♡そこは狂った愛の底♡ ※ヤンデレ
自然と四人はゆっくりと通りを歩くようになっていた。
桜庭惇吾(さくらばじゅんご)という少年は、照れ屋なのか何となく夢乃と隣同士になっても話さない。
「あの……惇吾くん、て…呼んでもいい?」
と、最初に沈黙を破ったのは夢乃の方だった。
「うん……まぁ、なんでもいいよ」
関西弁で話さない男の子と初めて会った。
惇吾の顔をマジマジと見ていると、晴代の言っていた通り確かに可愛い顔をしている。
零一の整った綺麗な顔とはまた違っていて、まるで小動物のような愛嬌のある顔立ちの美少年だ。
髪は日に当たると少し茶色で健康的な肌の色をしている。
なぜか夢乃は、この子は素直で優しい子に違いない。と直感した。
「わたしもね、もらわれっ子なんだ」
この子になら話すことが出来る。
そう感じて、夢乃は小声で問いかけた。
「惇吾くんは、お母さんがいなくて…寂しくない?」
惇吾は目を見開いて、夢乃を凝視した。
「寂しくない……って言ったら嘘になるかな」
「お母さんのこと、覚えてるの?」
「うん……夜の仕事してた。父親は知らないけど、俺の為に頑張ってて、それでお酒飲んでお風呂で死んだんだ」
口にこもるような声だが、はっきりと夢乃の耳に入ってくる。
「馬鹿な母親だって言われるけど、俺は母さんのこと世界一かっこいいって思ってる」